イスタンブール/イギタルプ
イスタンブールの4日目(日曜日)は、朝からまずホテルの引っ越しだ。
わたしは日本で3晩づつ、ふたつのホテルを予約したのである。
つぎのホテルは、アクサライというトラム駅から近い「イギタルプ」である。
タクシーで乗りつけてみたら、イギタルプはビルの谷間のビジネスホテルのような建物だった。
まわりの景色はつまらないけど、ホテルの内部はきれいで、なにも問題はない。
フロントで予約確認書を見せると、ここでもふたつ返事で、ロシア人みたいなお姉さん (おばさん?) が、××さーんとわたしの名前をいう。
ボスポラス海峡のクルーズはいかがですか、どこそこの観光はどうですかと訊くから、わたしはすでにあちこちを自由に歩きまわってるんだという意味で、イスタンブルカルトを見せると、あらあ、あははと笑った。
まだ朝の11時まえだったからチェックインは無理かなと思っていたけど、すぐに部屋に入れた。
このあとの光景は映画などでよく見かけるとおり。
お姉さんがカウンター上のベルをチン!と鳴らすと、ボーイが飛んできて、わたしの荷物を持ってこちらへどうぞとエレベーターに案内する。
わたしの部屋はエレベーターを2階で下りてすぐ左の、001号室だった。
これくらいなら階段のほうが早い場合もある。
ボーイは部屋まで荷物を運んでくれて、すぐに出ていかない。
これはひょっとするとチップを待っているのではないか。
わたしは原則としてトルコではチップを払わない主義だけど、荷物を運んでもらった手前、やはりいくらか払うべきではないか。
払うとしたら、トルコのチップの相場はいくらくらいだろう。
たしかポケットに硬貨が何枚かあるはずだが、1リラ (47円) じゃケチと思われやしないか。
どうしよう、どうしようと、これらをコンピューター並みの速度で思案し、思案してもわからないものはわからないから、えい、めんどくさい、持ってけ、ドロボーってことで、ポケットにあった硬貨をみんなやってしまった。
ボーイはサンキューといって、部屋のエアコンの説明をはじめた。
部屋からすぐに出ていかないのはそれが理由だったようだ。
イスタンブールに到着した007は、最初に部屋のなかを点検して、盗聴マイクを発見するけれど、あれは冷戦時代の話である。
平和な現代にそんなものはありそうにない。
それでもわたしは、ボーイが出ていったあと、もったいぶっていちおう部屋を点検する。
アルバトロスは古風な鍵だったけど、イギタルプの部屋のドアは最新式のカード型キーである。
風呂場をのぞくと、小さいながらもバスタブがついていて、どっぷりつかるわけにはいかないが、湯船に腰をおろして洗濯をするには便利。
冷蔵庫もあって、ジュースやコーラ、酒のミニボトルなどが最初から入っていた。
窓からの景色はロクなもんじゃない。
とにかくイスタンブールにはホテルが多い。
ありきたりの旅ではおもしろくないと考えているアナタ。
ガイドブックで紹介されているホテルなんかを参考にせず、(日本で予約するにしても) 行き当たりバッタリで見ず知らずのホテルを予約してみることだ。
へたすると散々なホテルに当たるかもしれないけど、それこそユニークな体験になることは間違いない。
トルコの安ホテルでは、トイレの便がわるく、水が流れないので、始末した紙はかたわらの容器に捨てるなんてところもあるらしい。
そんなトイレが現代の日本にあるだろうか。
そんなホテルに泊まったあなたは、ひじょうに珍しい体験をしたことになる。
そう思えるようになれば、あなたも立派な国際人 (コスモポリタン) だ。
どこへ行っても日本と同じ待遇を要求する人と、世界にはさまざまな人のさまざまな生活があるのだと理解できる人の、いったいどちらが国際人といえるだろう。
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コメント
こんにちは。イギタルプに宿泊予定でしたのでとても参考になりました。
窓の景色はろくなもんではないのですね~。前もって分かって心の準備が出来ました。11月7日から7日間お友達と2人で行ってきます。オバチャン2人の珍道中になりそうですがイスタンブルを満喫してきます。
投稿: はるはる | 2012年11月 2日 (金) 07時26分
わたしの記事が参考になったのなら幸せです。
イスタンブールからもどったら、ぜひ体験談を聞かせてください。
投稿: 酔いどれ李白 | 2012年11月 2日 (金) 17時51分
行って来ました。イスタンブル。着いて早々タクシーの洗礼を受けました…誤魔化されて100リラも多く払うはめに…。でも翌日からはオバチャン二人で気持ちを切り替えて目一杯楽しんで来ました。マラソン大会でボスポラス大橋を歩いたりエジプシャンバザールでさ迷ったりレンガにつまづいて転んだりしながら団体ツアーでは出来ない体験をしてきました。ホテルは気持ちの準備が出来て居たため快適でしたよ(笑)客ひきの多さにはグッタリしましたがエネルギッシュなこの街はまた訪れてみたいです。これからも「大沢村便り」楽しく拝見させて頂きますね。ありがとう御座いました。
投稿: はるはる | 2012年11月15日 (木) 09時01分
お帰りなさい。
うーん、100リラは、勉強代としてもイタイですなあ。
それでもまた行ってみたいなんて、見上げたこころざしです。
わたしのほうは、来年はロシアでしょ、ギリシヤでしょ、パリでしょ、アイルランドでしょ、西表島でしょ、安いツアーがあればキューバとか、ガラパゴスだとか、マダガスカルだとか、ハワイにもまた行きたくなっちゃったし、行ってみたいところはたくさんあるんですけどね。
このうちひとつぐらいまた紀行記を書けるかもしれませんから、ブログのほうもおヒマな折にのぞいてみてください。
投稿: 酔いどれ李白 | 2012年11月15日 (木) 12時22分