イスタンブール/レストラン
雨のなか、ほうほうの体でホテルにもどり、部屋でひと眠りしたあと、夜になって夕食をとるために外出する。
まだ雨はやんでないから傘をさして出かけた。
トルコには 「ロカンタ」 という大衆食堂がある。
店内にずらりと料理が並んでいて、コレちょうだいといえばいい。
エラそうなことをいってるが、今回の旅ではロカンタにはいちども入ってみなかった。
カドゥキョイで雨宿りした食堂は、ロカンタといえなくもないけど、並んでいるのはムール貝と、目の前で揚げていた串カツみたいなものだけだった。
べつにロカンタを敬遠したわけじゃなく、たまたま入る機会が、いや、機会はあったんだけど、混雑している店は迷惑だ、すいている店はまずいんだろうと、へ理屈をこねて行きそびれた。
この晩もわたしにふさわしい店を探して、スルタンアフメト駅のあたりをうろうろ。
イスタンブールにレストランは多い。
路地をのぞくと、女の子が喜びそうなオープンカフェ形式のカッコいい店がたくさんある。
あまりカッコいい店は入りにくいから、なかなか決められない。
たまたまあるレストランに海鮮料理という札が出ていた。
海鮮の好きなわたしが立ち止まったら、店内から支配人みたいなおっさんが飛び出してきて、たちまち店のなかへ引っ張り込まれてしまった。
どうせ食事をするつもりだったのだから、まあいいかとテーブルに座る。
このレストランはスルタンアフメット地区にある某ホテルの1階にある。
こじんまりとしているけど、天井まで壁画で飾られ、豪華なシャンデリアがぶら下がって、ベルサイユ宮殿のようなデラックスな店である。
いくら高くてもひとりで1万円ということはないだろうとヤケクソになって、とりあえずメニューを持ってきてもらう。
わたしは肉がキライだから、メニューの中にベジタリアン・ピザというものを見つけたときは嬉しかった。
ほかになにかの盛り合わせ、そしてワインを頼んだ。
イスタンブールのレストランで優雅にワインを飲むというわたしの夢が、まさに実現した瞬間だ。
なにかの盛り合わせが出てきた。
メニューに写真が載っていたから、酒のつまみのつもりで頼んだんだけど、なに、コレ。
チーズの切れっぱし、すりつぶしたトマト (らしきもの)、ピクルスの断片、そのほか得体のしれない “なにか” の盛り合わせだ。
和食に親しんでン10年だぞ、わたしゃ。
しかもそれをナイフとフォークで食べろというのだ。
おたおたしているうち、赤いペースト状のものをズボンに落としてしまった。
誰も見てないのを確認して、紙ナプキンでこっそりふき取る。
ピザはただのトマトピザだったけど、ハーフサイズのわたしの胃袋にダブルサイズのピザである。
支配人が寄ってきて美味しいですかと訊く。
まずいともいえないから、トルコ人にはとても理解できまいと思える日本人特有のあいまいな微笑みを浮かべる。
ワインを2杯飲んで、これで勘定は80リラ (3600円) だ。
なんだ、高くない、日本とたいして変わらないじゃないかという人がいるかもしれない。
しかしここはトルコだ。 タクシーや公共料金は日本の半分ていどの国なのだぞ。
くそっ、日本に帰ったらブログに書いてやる! と、腹の中でいきまく。
帰りにブルーモスクをのぞいてみた。
ブルーモスクは寺院なので、建物のなかはともかく、庭にはいつでも入れるのである。
時刻は夜の8時過ぎで、さすがにモスクの中はがらんとしていた。
夜間の照明と、それが水たまりに反射して、ブルーモスクは昼間にもまして荘厳だった。
どこかの無神論者が迷いこんできても、これならただちにイスラムに帰依しようって気になるかもしれない。
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