イスタンブール/鮮魚店街の1
イスタンブールに到着した最初の晩、タクシーでホテルへ向かう途中、わたしは海岸道路ぞいに、こうこうと明かりをつけた市場のようなものがあるのを見た。
魚が並べられているから市場のようだけど、夜の9時ごろ営業している魚市場なんてあるのか。
タクシーの運転手が道路の反対側をさしてなにかいう。
見ると、そちら側にも明かりのついたにぎやかな通りがあった。
ホテルに着いてから時間を推し量ると、この場所はホテルからそれほど遠くない。
で、わたしは翌日の午後、ひと眠りしたあと、そこまでぶらぶら出かけてみた。
時刻は夜の8時ごろだったけど、すでにトルコの治安の良さには絶対の信頼を置いていたから、ひとりで出かけることになんの不安もなかった。
海岸にそって30分ほど歩くと、シーフード・レストランがあった。
見るからに高そうで混雑している店だったので、そんなところで食事をする気にもなれず、レストランの海側の細い路地をつたって先へ進んだ。
するとまもなく前方に、ずっと遠方まで店も市場もなにもありそうにない、だだっ広い空地が広がってしまった。
距離を測り間違えたかとガッカリしてホテルにもどることにした。
帰りは道路の陸地側を行くことにした。
じつは魚市場は先刻のシーフード・レストランのすぐわきにあったのである。
わたしはレストランの海側の路地を抜けたので気がつかなかったのだけど、この市場はその道路側にあったのだ。
1枚目と2枚目の写真はそのシーフード・レストラン。
ところで夜の9時に開店している市場ってなんだろう。
ここには魚を食わせる小さな食堂が軒を接していて、この魚市場は食堂に併設された鮮魚店のものだった。
つまりそこでは店頭に並べられた魚を、目の前で料理して食べさせてくれるのである。
わたしは魚市場が見たいと切望していたのだけど、イスタンブールに到着した翌日の晩に、もうそれに準ずるものを見ることができたのだった。
鮮魚店を見てまわる。
からだ中に発疹のようなものがある大きなカレイがいた。
これってなんかの病気じゃないのと訊こうとしたけど、ほかのカレイもみんな同じだったから、けっして水銀中毒のカレイってわけじゃないようだ。
すこし古くなったようなサメやウツボも売られていた。
アンコウは居坐りのよくない魚だから、日本と同じようにかぎ針でぶらさがって売られていた。
コイやマス、はてはザリガニのような淡水産の甲殻類も売られている。
こういうものを見ているとわたしはぜんぜん飽きない。
ある店で、人のよさそうな顔をした親父が、これはスズキだという。
見るとほんとうにスズキだったから、トルコと日本で同じ名前の魚があるのかいと感心していたら、親父は続けて、これはトヨタ、こっちはニッサン、あれはホンダだという。
つまりわたしを日本人とみて冗談をいっていたのである。
ここには魚屋ばかりではなく、八百屋もあったし、イスタンブール名物のサバサンドもやっていた。
パンに魚をはさむというのが、わたしの嗜好に合いそうもないので、食べてみなかったけど、トルコの住民もわが大和民族と同じ魚食の民らしいから、刺身でもやってくれるといいのにと思う。
余計なことはさておいて、この鮮魚店に併設された食堂街は、おぼえておいて損はない。
このあとで見物に行くことになる道路の反対側のレストラン街と比べても、値段はきわめてリーズナブル、新橋や新宿の一杯飲み屋街的雰囲気で、気安く、おいしい食事が楽しめること請け合いだ。
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