イスタンブール/スィルケジ駅
映画007 「ロシアより愛をこめて」 はイスタンブールを舞台にしていて、オリエント急行のなかの死闘シーンが有名だ。
オリエント急行が発車するのが、イスタンブールのヨーロッパ側の駅 (欧州とアジアをまたぐイスタンブールにはその両方に駅がある) スィルケジだ。
映画というのはいろいろ事情があって、撮影に本物の駅を使うとはかぎらない。
セットを組んで撮影したり、似たようなほかの駅を使うことがよくある。
映画好きのわたしは、そういう点に興味があったので、スィルケジ駅を訪ねてみた。
この駅はなかなか貫禄のある石造りの建物で、残念ながらたまたまなにかの工事中だったけど、わたしはづかづかと駅舎のなかに入ってみた。
映画はまちがいなく本物の駅を使っていた。
なんせ50年もまえの映画だから、細部に変化はあっても、駅の基本的なたたずまいは映画のままだった。
DVDを持っている人は観返してほしい。
いちばん上の写真は、ただいま工事中のスィルケジ駅、2番目は待合室で、このふたつは映画に出てこないけど、3番目はホームのようすである。
ジェームス・ボンドとロシア人美女のタチアナは、画面の手前からホームに駆け込んでくる。
4番目はホームにあるカフェで、そこにロシア保安局のベンツが座っているのを発見して、思わずタチアナが立ちすくむのである。
この日は発車する列車のない時間帯だったのか、映画にくらべると駅は閑散としていたけど、カフェの配置なんかは現在でもほとんど当時のままだ。
つまらないことに興味をもつようだけど、007映画を通していろいろ見えてくることもある。
あとで見学することになる地下宮殿もこの映画のなかの重要なシーンに使われているが、こうした古い遺跡での撮影は、国の許可がなければ簡単にはできないことだろう。
当時の英国とトルコの関係はどうだったのか。 トルコ国内はどんな状況だったのか。
英国とトルコというと、とっても仲がわるかったことは、映画 「アラビアのロレンス」 に描かれている。
ここで英国の軍人ロレンスが、ゲリラ攻撃を仕掛ける相手はトルコ軍なのである。
もっともこれは第1次世界大戦のころの話だから、007のころとは歴史がふたまわりぐらい転換している。
第1次世界大戦でオスマントルコが崩壊して、ケマル・アタチュルクの共和国になったトルコは、第2次世界大戦では極力中立を守り、007のころには西欧に接近して、国内の近代化にいそしんでいた。
イスタンブールを舞台にした映画を作るとき、アタチュルクの意を継いだ指導者たちの頭の中には、歴史遺産や奇勝景勝に富むトルコを、まず観光立国として発展させようという配慮があったかもしれない。
だとすれば、トルコ政府が007映画の製作に協力したことはすこしも不思議じゃあない。
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