イスタンブール/歌謡ショー
1時間ほどしてベリーダンスが一段落すると、日本人の団体がぞろぞろと帰っていった。
わたしも立ちあがったら、ボーイが制止して、まあまあ、お座り下さいという。
ベリーダンスの2部でも始まるのかと思ってすわり直したら、つぎに若いころのペギー葉山みたいな、ショートヘアの元気のいい女性歌手が出てきた。
このあとはこの歌手のワンウーマン・ショーだった。
2年前はわたしも日本の団体の一員だったから、このショーは観ていない。
登場したのはいかにもベテランらしい、かっ達洒脱、サービス満点の歌手で、まず客のためにいくつかの言語で挨拶をした。
日本語でコンバンワといったのがはっきり聞こえた。
どうやらボーイがわたしを引き留めたのは、この挨拶を聞かせるためだったようだ。
いつのまにはわたしのテーブルには、トルコと日本の小さな国旗が立ててあった。
わたしも音楽は好きである。
トルコ語なんかわからなくても、音楽は世界の共通言語だから誰にでもわかるのである。
だからおおいに楽しんだけど、そのうち歌手が客をステージに上げてデュエットを始めた。
わたしは歌うほうはひどい音痴だから、ヤバいなと思う。
さいわい前のほうにもうひとりの日本人女性が残っていて、彼女が引っ張り出されて童謡なんか歌わされていた。
歌手もいっしょになって歌っていたから、この人は世界中の歌に対応できるらしい。 さすがはプロである。
わたしのテーブルに絶世の美女が2人すわっていた。
店内でも髪にスカーフをまいたままだからイスラム教徒らしい。
ただし、それぞれに男の連れがいて、男のほうはどうも東洋人のような顔をしている。
彼女たちは何者だろう。
つい、またわたしの推理癖が始まってしまった。
彼女たちのスカーフのまき方は厳格なイスラム教徒のものではなく、なんとなくインドネシアあたりのスタイルを思わせる。
たぶんインドネシアの富豪の男性が、美女をともなってイスラムの祭典を見物にきて、ついでに夜のトルコに繰り出したのだろう、とわたしの推理はそんなところだ。
うらやましいことである。
歌手はまだステージを飛びまわっている。
こういう場所では欧米の女性は積極的だから、そのうち座席にいた若い白人女性も立ち上がっていっしょに踊り出した。
どこかヨーロッパの王族のお姫さまみたいな、高貴な感じの美人である。
個人情報を守るのも大切だけど、昨今のそれはすこし行きすぎじゃないかと憤怒に堪えないわたしは、ここであえて歌手とお姫さまの写真を公開してしまう。
なんでもかんでも秘守していたのではドキュメンタリーは成り立たない。
開高健の釣り紀行に、行き先々に女を囲っているアマゾンの絶倫おじさんが出てきて、どんなおじさんなのか興味があったところ、このおじさんの写真はちゃんと本の中に載っていた。
そんなに遠慮する必要はないさ。
もちろん女性の顔写真の場合は、できるだけ美人に写っている写真を使うとか、いろいろ気遣いは必要だけど。
みなさんも国旗だけじゃつまんないでしょ。
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