イスタンブール/クムカプ
鮮魚店街と道路をはさんで反対側に、やはりこうこうと明かりをつけたにぎやかな通りがある。
こちらはいったい何なのか。
日本に帰国したあとで、ずっとむかしに録画した 「上原多香子・ベリーダンスの××」 というテレビ番組を見返してみたら、この通りが出ていた。
これはクムカプ (近くにこの名前の鉄道駅がある) のレストラン街というべきもので、にぎやかな通りの両側はすべてレストラン、バー、カフェなどの飲食店だった。
どの店も路上にまでテーブルを出して、大勢の客でごった返しており、楽士まで入ってにぎやかな宴会がくりひろげられていた。
どれどれと混雑のなかに分け入る。
わたしはどっちかというとネクラな人間かもしれないけど、ここで浮世のうさを忘れて飲み食いしている人たちを見ているうち、さすがに気持ちが弾んできた。
できればそのへんのテーブルに坐って、軽快な音楽に身をまかせ、ちょっぴりキューバにおけるヘミングウェイの気分を味わってみたかった。
しかしどの店もイスタンブール中のトルコ人が押し寄せてきたようなにぎわいで、おずおずとした日本人が座れそうな席はぜんぜんなかった。
通りの長さは、よくって百メートル。
わたしはぶらぶらと、はじからはじまで往復した。
イスタンブールには餅みたいにねばっこいアイスクリームがあることが知られているけど、ここにもそれを売る店があった。
しかしわたしが買ったのはアイスクリームではなく、ラク (RAKI) という酒。
これもトルコの名産で、水で割ると白濁するユニークな酒である。
度数はかなり強いから、ホテルにもどって毎晩ちびちびやるつもり。
イスタンブールの夜は長いし、旅はまだ始まったばかりなのだ。
「地球の歩き方」 には特別な記述がないけれど、クムカプはトルコ人のあいだでけっこう有名なところらしい。
けっして安そうな店ばかりじゃないけど、地元のトルコ人で混雑しているということは、観光客を相手にぼったくりをする店とも思えない。
問題があるとすれば、ここに書いたように、とくに週末はひどく混雑するということだ。
それでも行ってみたいという人のために、場所はトラムのベヤズット駅から、まっすぐ南下した海辺のそば。 たぶん、ふつうに歩いて20分ぐらい。
宝くじでも当たってもういちどトルコに行く機会があったときのために、わたしもこの場所もしっかりおぼえておいた。
この晩はトルコの飽食が集まったようなクムパクで何も食べず、ホテルの近所のスーパーで買った酒のつまみのウインナソーセージをパクパク食ったら、それだけで腹いっぱいになって、けっきょく正規の晩餐抜きの夜になった。
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