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2012年6月 2日 (土)

イスタンブール/バイラム氏

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バイラム(BAYRAM)氏はレストランのオーナーである。
彼に出会ったのは、トラムのギュルハーネ駅のちかく、スルタンアフメト駅からスィルケジ駅に向かって線路がぎくしゃくと折れ曲がったあたりである (写真参照)。
彼はレストランのオーナーの責務として、店のまえで腹をへらした観光客がやってこないかと目を光らせているところだった。
もっとも黒いサングラスをしていたから、目が光っていたかどうかはわからない。
彼は熟年であるけれど、なかなかハンサムで、黒い背広にサングラスをしていると、フランス映画に出てくるギャングのボスのようである。

ある目的でもって先を急いでいたわたしは、彼に呼び止められた。
腹なんかへってなかったけど、ふと見ると彼の店のまえに 「セマー」 の看板が出ていた。

セマー (旋舞) というのは、なんとかいうイスラムの教団で、男性信者がほとんど恍惚状態になってくるくるまわる、一種の宗教儀式のような踊りである。
ベリーダンスとならんで、その特殊性からトルコの名物になっており、今回の旅ではわたしもぜひ観たかったもののひとつだ。
じつはこのときのわたしは、セマーの公演をしているホジャバシャ文化センターというところへ、今夜の公演があるのかどうか確認にいくところだったのである。

セマーがレストランで、ワインでも飲みながら観られるならそのほうがいい。
で、わたしは彼のレストランで、夜の公演を予約していくことにした。

チャイをご馳走になりながらバイラム氏と話す(もちろんカタコトの英語だけど)。
わたしの職業はと訊かれてちょっと悩んだ。
どうやら彼はわたしのことを、日本から来たインテリゲンチャーと思っているらしい。
そういう人の期待をうらぎることはできない。
で、とりあえずペインター (絵描きのつもり) であると答えておいた。
彼のほうで勝手に理解して、アーチストですねという。
わたしは青春時代にほんとうにマンガ家を目指していたことがあるし、女の子のヌードくらいならいまでもさらさらと描けるから、これなら深く追求されても困らない。

わたしも絵が好きです。コレクションを見せましょうといって、彼は画集のようなものを持ち出してきた。
画集といっても、写真に転写した絵ハガキくらいの小さな絵が、30枚ばかり、スクラップブックに並べてあるだけだった。
わからないのは、これをバイラム氏本人が描いたのか、それとも趣味のコレクションとして集めたのかということだ。
あなたが描いたのかというと、ウンといったような、そうでないような。
しかしどうみても同一人物が描いた絵だし、わざわざ集めたくなるような特別な価値がある絵とも思えない。
目の前の人物は絵描きというより実業家というイメージなんだけど、ま、実業家でも絵を描くものがいたって不思議じゃない。
あるいはトルコの絵描きで、実業家スタイルが好みというものがいるのかも。

無理やり納得して、わたしは夜の公演のチケットを買っておいた。
バイラム氏は、あなたのためにいちばんいい席を取っておきましょう。 そのときトルコ・ワインをご馳走しましょうともいう。
なんだかほんとに映画のようになってきた。

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いちばん下の写真はバイラム氏。
個人情報の遵守なんてものに反発しているわたしも、ここでは彼の写真をおおっぴらにするのは控えることにする。
サングラスをするとちょうどこんな感じである。
この写真は夜になって再会したとき撮ったもので、昼間はスーツにネクタイをしていたからコワモテ。

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