イスタンブール/地下宮殿
ヴァレンス水道橋のところでふれたけど、まじめな為政者にとって、大都市に水を供給するのは大変な仕事である。
人間は水がなかったら生活が成り立たなず、生きていくことさえままならないから、繁栄した都市の背後にはかならず整備された水道があるはずである。
日本では墨田区にある江戸東京博物館に、江戸時代の水道のしくみがジオラマで展示されている。
イスタンブールには地下宮殿というものがある。
これは古い時代の貯水池で、ヴァレンス水道橋から導かれた水がここでたくわえられたとある。
なんでも世界遺産だそうだけど、ま、詳しいことはまたネットで調べてほしい。
あまり名所旧跡に興味のないわたしだけど、これは2年前の旅行でまったく見学しなかったところだから、話のタネに出かけてみた。
地下宮殿の入口はアヤソフィアのすぐ近くにあるけど、モノ置きみたいな建物で、地上から見たのではとてもそんな大きなものが地下に埋蔵されているとは思えない。
そんな入口に欧米人観光客が列をつくっていた。
チケットを買って入場すると、すぐ階段だ。
階段を下りるとそこに、暗闇の中に、とても貯水池という雰囲気じゃあない空間がひろがっている。
アーチ型の屋根と、それを支えるための無数のコリント式の円柱がならんでいて、これはまあ、たしかに宮殿といってもいいんじゃないかと思えてしまう。
柱がじゃまだけど、ずうっと先まで見通すと、広さはサッカー場くらいあるみたいだった。
うーんと考える。
貯水池用の穴を掘るだけなら誰にでもできるけど、掘った穴に屋根をつけるのは素人にはむずかしい。
あとから屋根をつけたのか、モグラみたいに地面を掘り進んだのか、そのへんがよくわからないけど、掘削機械のなかった時代のものとしては、めっちゃ壮大な土木工事だったはずである。
またしても007の映画になっちゃうけど、ここは 「ロシアより愛をこめて」 のロケ地として使われている。
ホントかウソか、地下宮殿のすぐ上にロシア大使館があることになっていた。
どれどれとジェームス・ボンドがボートをこぎだして偵察にいくと、無数のネズミがあらわれる。
映画の製作当時はドブネズミがたくさんいたのかもしれない。
あ、現在はネズミは一掃されたみたいだから、そういうもののキライな人も心配いりませんよ。
地下だから、ひんやりとしていて気持ちがいい。
床はぬれている。
そんな暗やみのなか、コンパクトデジカメでいい写真を撮るのはむずかしい。
ここに載せたのはなんとか撮れたもの。
地下宮殿の奥のほうにメドゥーサの首の彫刻があるそうである。
メドゥーサというのはギリシア神話に登場する怪物の名前で、その姿をひと目見たものは石になってしまうとされる。
わたしは地下の売店の女の子の写真を撮ろうとして、ダメですよといわれ、仕方がないからスルタンに扮したアルバイト君の写真を撮っていたので、そんなものがあるなんて気がつかなかった。
それでもイスタンブール観光をしたっていえるのかと叱責されそうだけど、そんなのこっちの勝手でしょ。
メドゥーサの首を見て石になりたくないもん。
ただでさえ、わたしの人生は Like a rolling stone なんだから。
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