« ゴメンナサイ | トップページ | 師走 »

2012年11月30日 (金)

埼山湾

すこしまえに万里の長城で遭難した日本人がいた。
あまり一般観光客が行かない辺ぴな場所をめざしたトレッキング愛好者のようだけど、そういうところへ行きたいという心理は理解できる。
わたしもあまり世間に知られていないところへ行きたがる人間である。10000a

しかしそんな辺ぴな場所は外国にばかりあるわけじゃない。
若いころ沖縄の西表島に旅したことがあり、ダイビングボートに乗って崎山湾 (さきやまわん) というところへ上陸したことがある。
この湾は西表島の西のほうにあって、けっこう広い湾なのに、陸続きの道がないので船でしか行きようがないところだ。
それでもかっては人が住んでいたこともあるそうで、桟橋だけがぽつんと残っていた。

上陸してみてそのあたりの海の美しさに吃驚した。
砂浜で素潜りしてみると、腰の深さの海底に、盆栽のような小さなサンゴが枝をのばし、そのまわりにクマノミや色とりどりの熱帯魚が群れていた。
いくらか深くなったところには、コブシメという大きなイカがただよっていた。
その後沖縄には何度か出かけているけど、崎山湾ほど天然自然のままの海を見たことがない。

あの湾はどうなっただろう。
まだあのころの、南海の孤島のような原始的な風景は保たれているだろうか。
というわけで、いま崎山湾についていろいろ調べている。

10000b 10000c

ネット上には旅、登山、温泉の紀行記があふれていて、西表島の体験記ももちろんあるけど、崎山湾にかぎればあまり記事が見つからない。
このあたりは文字どおりの日本の秘境といっていいところらしい。
それでも検索の結果、崎山湾と、そこから近い船浮地区について書かれた文章をいくつか見つけた。

その中のひとつに、崎山湾あたりをひとりで歩きまわった人の報告がある。
http://www.ne.jp/asahi/suzuka/walker/iriomote/essay/index.htm
この人は本格的な登山家らしく、簡易テントや炊事道具を持って、水びたしになりながら干潟を横断し、道なき道を踏破している。
作家の素養のある人なら、じゅうぶん開高健ノンフィクション大賞でも受賞できそうな体験だけど、ま、ロマンチストの誰もが小説家になれるわけじゃない。

この人が崎山湾に行ったとき、そこに石垣島から移住した人が、家を作ろうとしていたそうである。
その家はどうなっただろう。
グーグルの衛星写真をながめても、それらしき家は見当たらない。
なにしろこの報告自体がいまから10年ぐらいまえのことだから、開拓者の夢は挫折したということだろうか。
そんなことを確認しても意味のないことみたいだけど、わたしはまた崎山湾に行ってみたい。
アマゾンや熱帯ニューギニアばかりが秘境じゃないのだ。
高血圧で血管がブチ切れないかぎり、わたしはまだ未定の、来年の旅の目的地に崎山湾を数え上げておくことにする。

※ここに添付した写真はネット上で見つけたもので、桟橋上を歩いている人々はなにかの調査隊だそうだ。
下の写真をみると、カヌーやカヤックで上陸する観光客もいるらしい。

| |

« ゴメンナサイ | トップページ | 師走 »

旅から旅へ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 埼山湾:

« ゴメンナサイ | トップページ | 師走 »