ロシアの旅/パンク娘
この日の業務を終えたらしいボディコン娘が、身支度をしてさっさと帰ってしまったあと、小部屋からもうろうとしたまなざしの若い娘が出てきた。
たまげた。
彼女はフリルのついた赤いミニスカートに鼻ピアスのパンク娘だった。
寝ているところを起こされたらしく、わたしが英語や日本語で話しかけても、アハンアハンと鼻で返事するだけで、わかっているのかわかってないのかさっぱり。
彼女を見てMさんもあっけにとられていた。
Mさんはいつもかなり高級なほうのホテルに泊まる人だから、こんなフロントがこの世に存在することすら信じられないんじゃないか。
仕方ないです、とりあえず2日は我慢しますとわたし。
こんなホテルでもモスクワで格安ホテルを探す人には貴重だろうから、ホテルのホームページを書いておこう。
www.kdvorhotel.ru
ロシアでは外国人が国内を旅行する場合、到着しましたという手続きを3日以内にしなければいけないんだけど、これの代行をパンク娘にお願いして700ルーブル(2100円ぐらい)。
なお、これ以降ルーブルはロシア語のPで表記することにする。
この旅のあいだの為替相場は、おおむね1Pが3円見当。
Mさん夫妻がわたしを置いて帰ってしまうと、わたしはいよいよ敵陣に取り残された兵士の心境だ。
ちょっとさびしかったけど、そのうちむらむらと痛快な気分がわいてきた。
これが旅というものだ。
これまでも中国の奥地でさんざんな宿に泊まってきたではないか。
まだまだ日本の奥地にだって、これよりひどいザコ寝の山小屋はいくらでもある。
なんといってもわたしは日本の貧乏人なのだ。
一泊6000円ていどのホテルにこれ以上のものを期待するほうがおかしいのだ。
じっさいに2日間このホテルに泊まっているうち、わたしの気持ちには大きな変化が生じた。
たとえばフロントのパンク娘もよくみるとなかなか可愛いところがある。
朝食を持ってきてもらったときなどに彼女と挨拶をかわすうち、だんだん家族的雰囲気を感じるようになってきた。
こういう感じは5つ星なんてホテルじゃぜったいに味わえないものにちがいない。
そういうわけでこの格安ホテルがおおいに気にいったわたしは、あとで追加延長をして、ロシアの旅の冒頭にまず4泊、サンクトペテルブルクから帰ったあともここに4連泊してしまったのである。
このパンク娘の素顔は、とりあえず一部分だけを紹介しておき、ここではホテルの窓から見えるトッテモつまらない景色を紹介しておこう。
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