ロシアの旅/石けんを買う
無事にホテルに落ち着き、Mさん夫妻が帰ってしまったあと、わたしはさっそく近所に買い物に出かけた。
外国のホテルに泊まった場合、備えつけの石けんはロクなものがないし、わたしは洗濯もしなくちゃいけないから、いつもまず石けんを買うことにしているのである。
ホテル・カレトニードボルでは、部屋は通常のがちゃりとまわすタイプの鍵だけど、廊下から階段のある場所まで、そして建物から外へ出るために2個所のドアがあって、ここを開閉するためにはカード型キーを使う。
もう暗くなっていたけど、ぜんぜん危険は感じなかった。
夜道でも車の往来はけっこう多いし、まだ若い娘だって歩いているのだ。
外国に行くとやたらに警戒してしまう人がいるけど、あらかじめの調査、現地での状況判断に誤りさえなけれぱ、そんなにおそれる必要はないと思う。
注意しなくちゃいけないのは、外出のさいパスポートを忘れないことである。
この点についてはMさんからも注意されていた。
ロシアの警官のなかには、小遣い稼ぎでチェックをやっている者もいるそうで、Mさんも以前パスポートを忘れて、警察までしょっぴかれたことがあるそうである。
ただ、わたしの感覚ではそうした警官の横暴はすこしづつ改善されているような雰囲気もある。
わたしはこの旅でいちどもパスポートを見せろといわれたことがなかった。
ぶらぶら歩いていたら24時間営業のドラッグストアがあった。
ずけずけ入っていって、店のおばさんに石けんアリマスカと訊いてみた。
ここではじめてわたしは、この国では簡単な英語でさえ通じないことを知る。
SOAPと紙に書いてみたけど、相手は首をかしげるばかりである。
しかしこういうとき、むかしとった杵柄、マンガ家をこころざしたのは無駄じゃなかったのだ。
わたしは女の子がシャワーを浴びている絵をさらさらと描き、その手ににぎっているものを、これが欲しいのだといってみた。
うんとうなづいたおばさんが持ってきたのはスポンジだった。
なるほど。
こんちくしょう!
絵に泡をつけ足して、ようやく手にした石けんを持ってホテルに帰る。
やれやれ。
添付した写真は、買い物の帰りに見かけた看板。
ほんのすこしだけロシア語をかじったことのあるわたしだから、この女性の名前はイリナ・スルツカヤであることがわかる。
同名のフィギュアスケート選手もいることだし。
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