ロシアの旅/風景画
山や川、湖を描いた風景画の一群がある。
そこでは人間の生活は、せいぜい掘っ立て小屋や、湖の上に浮かぶ小舟や、囲いの中の家畜等で間接的に描かれているだけだけど、これがまたたまらない。
雨にぬれたシラカバの森を散策する人々、教会のあるのどかな村の風景、黄色く染まったシラカバの林とそのまえを流れる小川、ミヤマガラスのいる雪景色、どこまでもどこまでも続くライ麦畑などなど、写実ということに忠実だった画家たちの残した作品は、そのままわたしの空想の世界への扉なのだ。
むずかしい絵画理論やテクニックなんぞは無視して、わたしの魂魄はただもう、ひたすら描かれたロシアの風景のなかをさまよっちゃうのである。
トレチャコフ美術館の収蔵品のなかに 「ミヤマガラスの飛来」 という有名な絵がある。
本来は縦長の絵なので「the rooks have come back」という言葉で検索すれば、縦長作品を見ることができます。
雪景色の中にシラカバが数本立ちならび、そのこずえにたくさんのカラスの巣があるというもので、わたしの好きな絵だけど、どこが好きかという理由をわかりやすく書けるほどの文才がない。
いっしょうけんめい頭をしぼってもいくらかもらえるわけじゃない。
それでぜんぜん関係ないことを書く。
ミヤマガラスというのは日本にもいるらしいけど、わたしが知っている日本のカラスは、ほとんどがまっ黒なハシボソガラスとハシブトガラスで、ほかにはめったに見たことがないけど、カササギやホシガラスぐらいしかいない。
ロシアでは日本のものと同じの、全身がまっ黒なカラスを見たことがないから、この絵に描かれたミヤマガラスも日本のものとは異なる可能性がある。
ロシアではあちこちで頭でっかちの愛くるしいカラスを見た。
もう1種類、それより大きめで、トルコで見たことのある部分的に灰色のカラスがいたようだけど、このどちらかがロシアのミヤマガラスだろうか。
調べてみたら、頭でっかちはニシコクマルガラスというらしい。
ミヤマガラスはどこかべつにいるらしいので、これ以上の詮索はよそう。
この旅では田舎へ行ったおりなどに、あちこちで木々のこずえに鳥の巣を見た。
バードウォッチャーでもあるわたしは、そのたんびに過酷な環境を思い、春を連想させる生命のいぶきを感じとり、「ミヤマガラスの飛来」 という絵のことを思い出したのでありました。
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