ロシアの旅/文学少女
かほりクンは本もよく読んでいるらしく、××を読んだことがありますかと訊く。
やはり最初はなんの本だかわからなかったけど、そのうちホメロスの 「イーリアス」 のことだとわかった。
わたしは3年前にトルコへ行って、トロイの遺跡を見てきたばかりだよと返事する。
日本の本はなにか読んだことがあるかいと訊くと、井原西鶴がおもしろかったといいだした。
ちゃんとロシア語の翻訳版が出ているそうだけど、わたしですら言葉の接ぎ穂を失いそうな、若い娘が読むにしちゃめずらしい本である。
日本じゃあまり女の子が読む本じゃないけどねえ。
かほりクンは経済学部だというから、ロシア教育相はこの日本の先駆的アナリストを、テキストにふさわしいと判断して、大学の教科書に採用したのかも。
古すぎて政治的に問題が生じることもなさそうだし。
もっと最近の本はと訊いてみたら、世界的ベストセラー作家の村上春樹の名前が出た。
しかしあまりおもしろくなかったそうだ。
だって意味がわからないんだものという。
彼女にもへそ曲がりの傾向があるなと安心したものの、わたしのほうもロシアの文学作品なんてほとんど読んだことがないからえらそうなことはいえない。
ソルジェニーツィンやナボコフなんか持ち出しても、19歳の相手にわかるかどうか。
芸術の国ロシアでは、詩人は尊敬される職業だなんてことをどこかで読んだことがある。
ロシアにはアンナ・アフマートワという有名な女流詩人がいる。
この詩人の肖像画は、あとでエカテリーナの宮殿に行ったとき、現代的に描かれたものを見ることになるけれど、かほりクンは彼女の詩についてもべらべら。
しかし詩だけは、こればっかりは、たとえ言葉がわかったって理解するのはむずかしい。
わたしはアフマートワの詩についてなんの知識もないのである。
フィーリングだからねといってごまかしておいた。
しかしかほりクンが詩に興味があることだけは、サンクトペテルブルクへ行ったあとも忘れなかった。
写真はメトロの駅でのかほりクン。
読んでいるのは詩集ではなく、地下鉄の路線図。
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