ロシアの旅/鍵の木
歩くのをイヤがるかほりクンを連れて、クレムリンをまわりこむ。
クレムリンはモスクワ川の川岸にそぴえる城塞なので、すぐにモスクワ川の大きな橋に出る。
橋をふたつ越えてから左折すればトレチャコフ美術館ですと、これはかほりクンではなく、わたしが彼女に説明した言葉。
どっちがガイドかわからない。
夏のモスクワではモスクワ川のナイト・クルーズが売りものになっているけど、この季節の川はま白に氷結している。
そのほうがいいかもしれない。
氷がないときはあまりきれいな川ではないそうである。
橋の上からながめるクレムリンの威容はなかなかのものだ。
魚はいますかと訊いてみた。
かほりクンは釣りなんてやらないから、知りませんと答える。
ひとつ目の橋の下流に、帆船のマストのような奇妙な搭が見えた。
かほりクンが、あれは何年かまえになんとかいう外国の建築家が立てたもので、モスクワ市民の評判のわるいものですと説明する。
トレチャコフ美術館が近くなって、ようやく彼女は本来のガイド役にめざめてきたらしい。
ひとつ目の橋を渡ったところで、かほりクンがこっちとわたしの方向を変えさせた。
川はふたすじ、道路は1本で、橋はまっすぐ行ったところにもうひとつしかないはずだから、どういうことかと不審に思ったけど、川沿いの公園のまえに、歩行者専用の小さな橋があった。
トレチャコフ美術館はこの橋を渡って数百メートル行ったところである。
橋のたもとに大型観光バスが数台停まっていたから、これはトレチャコフ美術館を見学する観光客のための橋らしい。
そういえば橋のたもとの公園にどんとそびえているのは、ロシアが誇る有名画家のレーピンの像だった。
この橋の上に奇妙なものがならんでいた。
木の枝にびっしり南京錠をとりつけたようなもので、ほら、日本にもあるでしょう、アレっと、かほりクンはすぐに言葉がでてこない。
つまり神社の願掛けみたいなもので、モスクワの恋人同士がお互いの結びつきを祈って、ここに南京錠をとりつけるのだそうだ。
もうスペースがないってんで、中には橋の欄干に取り付けちゃったものもあった。
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