ロシアの旅/ウクライナ・レストラン
トレチャコフ美術館を出るころには午後の4時ちかくになっていた。
腹はへってないけど、わたしひとりの都合ばかり考えているわけにいかない。
かほりクンに何か食べるかいと訊くと、この近くにわたしの知っているウクライナ・レストランがありますという。
彼女は以前この近所、トレチャコフ美術館の近くに住んでいたのだそうだ。
ウクライナ料理なんてもちろん知らないのだから、なんでもいいやとそのレストランに行ってみることにした。
かほりクンの祖母はいまでもウクライナに住んでいて、夏になると彼女も母親といっしょにそこを訪問するそうである。
ウクライナ、コーカサスなんて地名は、ロシアとともに、わたしにロマンチックなあこがれを感じさせる響きをもっているので、うらやましいと思う。
トレチャコフ美術館から近いメトロ駅の周辺がちょっとにぎやかな通りになっていて、くだんのレストランはそこにあった。
入口でコートを預かってくれたのは民族服の娘たちである。
わたしはワインを注文した。
かほりクンが、しょっぱいワインにしますか、あまいワインにしますかという。
しょっぱいワインというのは聞いたことがないけど、辛口ということらしい。
もちろんそれにした。
かほりクンは甘ったるいグレープジュースみたいなものを飲んでいた。
イミナさんの実家で赤いボルシチを食べたけど、かほりクンは緑色のボルシチがありますという。
なんでもいいや (どうせロクなものじゃないだろう) と、それを注文した。
ほかにワレニキという水餃子のようなものを頼んだ。
スライスした黒パンにはラードとニンニクのペーストを塗って食べる。
ほかになにか食べますかというから、メニューをながめてみた。
これはナニ?、あれはナニ? と質問して、ウサギ料理があることを知った。
鰻 (うなぎ) ではなく、兎 (うさぎ) である。
ウサギなんて日本ではあまり食べられてないような気がする。
うまいのかまずいのかわからないけど、西洋料理なんてなにを食べても美味くないにちがいないから、どうせならってことでこれを注文してみた。
出てきたのは肉のかたまりに白いソースをかけたもの。
使いなれないナイフとフォークで食べようとすると、骨がまともにナイフに当たり、硬くて切れない。
見かねたかほりクンが、かたまりをひっくり返して肉をはずしてくれた。
なんだか介護をされている老人になったような気分である。
食べた感想をいわせてもらえば、ぱさぱさして美味くない、無理して食べたいものではないということになる。
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