ロシアの旅/ふたつの聖堂
食事を終えて、この日はもう解放されたかったけど、ライサさんはこれだけではもうしわけないと思ったのだろう。
市内にあるふたつの聖堂を見学していくことになった。
わたしが泊まっているホテルは、カザン聖堂のすぐ近くということはすでに書いた。
カザン聖堂についての説明はほどほどにしておくけど、サンクトペテルブルクに来て、しかも毎日そのまえを通っていて内部を観ないわけにはいかない。
外観はかなり特徴的な寺院である。
いちばん上の写真はこの晩に撮ったものだけど、なにかを抱きかかえるように腕をのばした形をしている。
ガイドブックによると、ロシア正教会としてはめずらしくカトリックふうなところのある教会だそうだけど、そういわれると、ロシア正教の教会というより、どこかの国の国会議事堂みたいなかたちである。
あとに述べる血の上の教会やイサク聖堂が博物館扱いなのに対して、ここだけは現役の教会であるそうな。
ライサさんに案内してもらって入ってみた。
彼女も聖堂に入るまえにかならず胸のまえで十字を切る。
日本人で無神論者で、そのスジの人間でもないわたしは、十字も仁義も切らないけど、そういういいかげんな人間はイスラム圏では人間以下とみられるそうである。
人間以下のせいかどうか、わたしはあつかましく何枚か写真を撮ってしまった。
写真撮影は禁止なんてガイドブックに書いてあったんだけどね。
内部が金ピカなのはほかといっしょである。
残念なことに、モスクワでたくさんの聖堂を観て、サンクトペテルブルクでも豪華な宮殿を観たわたしは、もうすでにこのていどでは感心しなくなっていた。
似たような寺院はマルタ島やイスタンブールでも観たことがあるしねえ。
そのままホテルにもどって午睡をしたかったけど、これだけではもうしわけないというライサさんに、つぎに血の上の救世主教会に連れていかれてしまった。
血の上とはおだやかじゃないけど、ここはアレクサンドル2世が暗殺された場所に建てられた教会なんだそうだ。
この教会はわたしのホテルとカザン聖堂をむすぶ線の延長上にあって、なんというか、クレムリンのワシリー寺院と同じ、装飾過多の、魔女のお城みたいな建物である。
もちろんライサさんはここでも胸のまえで十字を切る。
ロシア人の信仰心が厚いことはよくわかるけど、わたしが知っているかぎり異教徒のイスラム人も同じくらい敬虔な信仰心を持っている。
持っていないのは、そ、日本人くらいかもね。
内部は、ここも金ピカ壁画天井画がてんこ盛りだけど、やはりなみたいていの豪華さではおどろかなくなっていた。
それよりホテルにもどって昼寝がしたかった。
せっかく外国に行って、こいつはナニをしてるんだという人もきっといるだろう。
いいじゃないの、わたしはもともと名所旧跡ってもんはニガ手なんだし。
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