ロシアの旅/ホテル・グリフォン
ナタリー・ホテルに泊まったのはひと晩だけで、翌朝はサンクトペテルブルクの格安ホテルに移動である。
格安といっても1泊が7000円ぐらいで、名前はグリフォン(=GRIFON) という。
これはどういう意味かと思ったら、ギリシア神話の中の、ワシの翼をもったライオンという怪獣のことだった。
ここに3泊して、支払いのトータルは6,850P。
場所はカザン聖堂からグリボエードフ運河という、幅10メートルくらいの運河づたいに、ネフスキー通りと反対方向へ4、500メートル歩いたところで、ここもモスクワのホテル・カレトニードボルに似た、入口はドア1枚というホテルだった。
階段を上がった4階にフロントがあり、そこまでエレベーターがないところもよく似ている。
ただフロントにはモスクワの格安ホテルよりちゃんとしたデスクがあって、わたしが行ったとき女優のキャンデス・バーゲンみたいな美女が坐っていた。
美女は日替わりで変わるようで、バーゲンちゃんのつぎの日はオードリー・ヘプバーンみたいな娘だった。
宿泊手続きはいっしょに行ったライサさんがやってくれたから、わたしは何もする必要がなかった。
朝食はフロントのわきにある小さな食堂でとることになっているという。
部屋もきれいで、きれいすぎるくらいで、なにも文句をつけるところはなかった。
ベッドはダブルサイズだし、広々としたバスルームにちゃんと湯船もあった。
室内を見るかぎり、これでは格安ホテルとはいえない立派なホテルである。
だんだんわかってきたけど、ビルの中のワンフロアかツーフロアを改造しただけで、エレベーターもない中堅ホテルが、ロシアにはたくさんあるらしい。
わたしにしてみれば安いということが最優先なので、なんだっていいけれど。
ちょっと意外だったのは、ロシアでは外国人旅行者の管理がきびしく、観光旅行をするためには、招待状をもらうかバウチャー手配旅行をするかしか方法がないと聞いていた。
バウチャー旅行の場合は、その書類に宿泊先のホテルと滞在日程が記載されていて、ホテルに宿泊したときに宿泊証明のカードをもらい、それを出国のときに検査されるそうである。
それほど管理が厳重なはずなのに、サンクトペテルブルクのホテルではやけに簡単に手続きがすんだ。
わたしがバウチャー旅行でなく、個人的に招待してもらう形式の旅行だったせいかもしれないけど、帰国のさいの空港でもめんどうなことは何もなかった。
これなんだよと、わたしはロシアの外務省に提言してしまう。
すべての外国人がかんたんに旅行できるようになれば、観光資源の豊富なロシアに観光客はいま以上に押し寄せ、ガスや天然資源に頼らずともこの国の外貨準備高はどんどん増加するだろう。
ああ、もう、プーチンに手紙でも書くしかないか。
この翌朝、さっそく食堂へ行ってみた。
わたし以外に父と息子らしいふたり連れ、そしてひとり旅らしい女性の先客がいた。
キッチンのかたすみにパンやハム、チーズ、飲み物などが置かれていて、どれでも好きなものをとって食べていいようになっている。
さらにフロントの美女がなんとかかんとかという。
なんでもOKなんていいかげんな返事をしておいたら、目の前で目玉焼きを作ってくれた。
これだけでもまったく味気ない食事とはいえない。
交通の便からすれば、このホテルからエルミタージュまで徒歩15分ぐらい。
モスクワ駅までも2キロぐらいだから、サンクトペテルブルクのほぼ中心にあるといってもさしつかえがない。
ああ、ロシアよ、おまえはなぜ日本人に自由旅行を許してくれないのだとまた叫んでしまう。
写真はホテルの入口と室内のようすとフロントと食堂で、向こうむきでお仕事中なのがバーゲンちゃん。
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