ロシアの旅/夜の散歩
ライサさんと別れて、この日はいったんホテルにもどった。
フロントのキャンデス・バーゲンちゃんに、なんか冷たい飲み物ありますかと訊くと、なにもありませんとあっけらかん。
ここは格安ホテルだからホテル内に売店もないのである。
ため息をつきつつ、ライサさんにもらった紙パックのジュースがあったことを思い出し、フロントわきのキッチンにあった冷蔵庫に入れさせてもらう。
このあと洗濯をしているうち夜の7時ごろになった。
部屋でのんびりしているだけでも腹は減る。
買い物ついでにぶらぶらとエルミタージュまで往復してくることにした。
まだ人々の往来ははげしいからなにも不安はない。
外国のひとり歩きは危険だと信じている人がたまにいるけれど、そういうときはまず往来を観察すればよい。
たちまち強盗に遭うような危険な街なら、そもそも若い娘がひとりで歩けるわけがないではないか。
わたしの安全度の目安は、若い娘がひとりで歩いているかどうかなのである。
ネフスキー通りのつきあたりにある旧海軍省の建物までいき、そのままエルミタージュの前まで出て、宮殿広場の夜景をながめる。
サンクトペテルブルクの街も、夜になるとライトアップされてとてもきれいである。
そんな街を、知り合いもなく、ひとりでぶらついていると、しみじみと喜びがこみあげる。
これは孤独を愛する人にしかわからないことだろう。 しみじみ。
ネフスキー通りをぶらついて、てきとうな時間にホテルにもどることにした。
ホテル・グリフォンはカザン聖堂からグリボエードフ運河にそって数百メートル歩いたところにあるんだけど、そのとちゅうに小さな橋がかかっている。
この橋は銀行橋といって、歩行者専用の小さな橋のくせに、両はじに神話の怪獣グリフォンの像があって、なかなか貫禄のある橋だ。
グリフォンは黄金を守る怪獣だそうだから、銀行橋か、なるほど。
※橋の写真は昼間撮ったもの。
この晩は対岸のほうをつたい、銀行橋を渡ってホテルにもどることにした。
橋のすこし手前にコンビニみたいなちっぽけな商店があったので、ここでビールとおつまみを買う。
言葉は通じなくても、手ぶりだけでも缶ビールぐらいは買えるものだし、なにしろコンビニだから値段も不当であるはずがない。
この店はホテルから200メートルぐらいしか離れておらず、街をぶらついたあとちょいと寄るのに好適な場所にあるから、これから3日間、毎晩のように立ち寄ることになってしまった。
缶ビールとおつまみで至極満足して、部屋で、あ、またしみじみと喜びが。
| 固定リンク | 0
« ロシアの旅/ふたつの聖堂 | トップページ | 開花 »
コメント