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2013年3月21日 (木)

ロシアの旅/日本食

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エルミタージュを出て、ライサさんと食事をすることになった。
日本食を食べさせたら彼女がどんな反応を示すか興味があったので、日本食レストランに入ってみた。
街を歩いているとよく看板を目にするから、サンクトペテルブルクに日本食レストランはかなり多いようである。
ネフスキー通りにある店に入ってみると、中途半端な時間であるにもかかわらず、若い娘の2人連れがむしゃむしゃとなにか食べていた。

ロシア語はわからないけど、メニューは写真入りだ。
はじめからずっとながめていくと、いちおう寿司や刺身もある。
ほかに日本にこんなものがあるのかいといいたくなるような不思議な料理もある。
値段はおどろくほど高いわけでもない。

わたしは遠慮なく寿司や刺身を注文した。
注文をとりにきたのはロシア人の娘だった。

やってきた刺身を食べて、べつにおどろくような感想があったわけじゃない。
寿司も刺身もまずかった。
日本にあるいちばんまずい回転寿司よりさらにまずい。
わたしは日本で、けっして極上じゃないけど、刺身が大好きでしょっちゅうそういうものを食べているのだ。
チーズや野菜の具をのせた、いわゆる西洋ふうの寿司なんかとても食べられない。
ライサさんは焼肉をのせたチャーハンみたいなものを食べていた。

074b

ここでわたしはライサさんにいいたくないことをいわなくてはならなかった。
ライサさんはわたしを案内していろんなものを見せるために、仕事を休み、車を用意し、目いっぱい詰めこんだスケジュールを組んでいるらしい。
これではツアーとあまり変わらない。
そこでわたしとしては (遠慮がちに)、そういう案内は不要です、わたしは街をぶらぶら歩きたいんですといってみたのである。

わたしの話を聞いてライサさんの顔がだんだん悲しそうなものになってきた。
彼女にしてみれば、けっして若くないわたしが、歩いて観光をしたのでは大変だというので、車を用意してせいいっぱいの歓待を予定していたところが、わたしのほうでそんなものは要らないというのである。

これはむずかしい問題である。
ふつうの人なら、おとなしく相手におまかせして、車で運んでもらうだろう。
ところがわたしはふつうの人ではないのである。
わたしは変人のせいか、こういうことはしょっちゅうある。
仲間と旅行に行っても、わたしひとりだけ好みが違うということが。

融和ということを優先する人ならば、自分ひとりが我慢すればいいんだと割り切るだろうけど、一生にいちどかもしれないロシア旅行で、我慢して他人のスケジュールに身をまかせるべきか。
美しいライサさんを苦しめるのは本意じゃないし、うーん、ほんとハムレットの心境だよな。

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