ロシアの旅/レンブラント
エルミタージュでレンブラントを見逃してしまった。
おまえはアホかといわれてしまいそう。
ぜんぜん観なかったわけじゃない。
「イサクの犠牲」 という絵をなんとなくながめて、これが聖書の中の1場面であることは一目瞭然だから、これはアノと思った記憶があるし、帰国してから写真を整理していたら、「放蕩息子の帰宅」 もちゃんと撮ってあった。
だからぼんやりしていて、描いた画家の名前にまで思いが到らなかったということらしい。
どうしてレンブラントに無関心だったのかということを、つらつら考察してみた。
まず旅に出るまえに、エルミタージュには古今東西の名画が山のようにあると聞いていた。
どっちかというと純粋ロシア絵画だけに重点を置くことにしていたわたしは、ムダな抵抗ということで、エルミタージュの収蔵品について深く勉強してなかった。
エルミタージュのレンブラントというと、上記の 「放蕩息子」 や 「イサク」 がよく知られている。
ただソ連時代、エルミタージュの絵画は鉄のカーテンの向こう側にあって、他の欧州の絵画に比べると西側に紹介されることが少なかった。
ひとつ例をあげると、エルミタージュにルーベンスの絵で、まだつい最近、日本にいるときなにかのポスターで見たことのある絵があった。
絵の出来からすれば、これはルーベンスの代表作のひとつであると思われる。
へえ、これはエルミタージュにあったのかいと感心し、帰国してからその絵のタイトルを調べようとした。
ところがわたしがいつも頼りにしているウィキペディアにもこの作品は載ってない。
かたっぱしから図録にあたって、英語のタイトルは The Union of Earth and Water であることがわかったけど、日本ではなんというタイトルになっているのだろう。
図書館まで出かけて調べて、ようやく 「天地と水の結合」 であることがわかった。
これもエルミタージュの絵画が西側に紹介されることが少なかったことの証明かもしれない。
もうひとつは、エルミタージュにあるレンブラントは、それを収集した王侯貴族の好みもあったのかもしれないけど、神話や聖書の1場面を描いたものが多い。
彼の傑作 「夜警」 や 「デュルプ博士の解剖学講義」 のような、当時の現実社会や風俗を描いた作品は、エルミタージュには少ないのである。
これはわたしの好みとはちと違うのだ。
レンブラントの描いた肖像画は、エルミタージュにたくさんあるらしいけど、残念ながら、肖像画はほかの画家の作品もたくさんあるので、現地にいるときはとくに気をひかなかった。
ただひとつ、帰国してからぜんぜん記憶にないのを残念に思ったのは 「ダナエ」 という絵だ。
これはすっぽんぽんのオンナの人が、ベッドで、さあいらっしゃいと誘っている絵で、ゴヤの 「裸のマハ」 に匹敵するくらい官能的な、つまりイヤラシイ絵である。
しかもオンナの人の顔が、なぜかそこだけなまなましく現代的で、よけいイヤラシイ。
この絵を観て発情しちゃった人がいて、ダナエを自分だけのものにしようと絵に硫酸をかけてしまったというから、イヤラシさもハンパじゃないのである。
いまではなんとか修復されたらしいけど、顔だけ違和感があるほど現代的というのは、修復に手ぬかりがあったのかもしれない。
見たかったなあ。
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