ロシアの旅/バリアフリー
エルミタージュは過去に革命や大火、大戦中には戦災にまきこまれている。
名画や彫刻などは戦争や内乱や革命のようなゴタゴタがあると、破損されたり行方不明になってしまう場合が多い。
幸いなことにレーニンもトロッキーも芸術を保護することだけは忘れなかった。
芸術にとってもっとも不遇な時代に、それらが国家によって保護されたということは、ロシア人の見識の高さの証明なのだろう。
世の中には自分たちのイデオロギーに合わないという理由で、人類の世界遺産をダイナマイトでぶっ飛ばしてしまう原理主義者もいるのである。
大火や戦火の被害については、ロシア人はメンツを賭けて修復した。
修復には莫大な費用がかかっただろう。
それをすこしでも取り返すために、なんでロシア政府は外国の観光客をどんどん受け入れないのか。
ツアーだけではなく、どうして自由旅行を受け入れてくれないのか。
と思ったけど、これは日露の政治問題かもしれない。
わたしは格安ホテルでイタリア人客に出会ったことがあるから、自由旅行が許されてないのは日本人だけかもしれないのだ。
やっぱりプーチンに手紙でも書くか。
愛国主義者の安倍クンに、ロシアに対してはもうちっと妥協したほうがいいんとちゃうかと、そっちのほうの提言が先か。
ぶらぶらと装飾過多の部屋から部屋へ。
展示されている絵画や彫刻以外にも、ここでは室内装飾や天井画、床のタイル、モザイクなど、ありとあらゆるものが一級の芸術品といっていいから、美術品の入れ物である建物自体も芸術なのである。
そして建物を置く場所、つまりサンクトペテルブルクの街そのものも、世界でただひとつの新古典主義様式をもつ芸術的な街である。
芸術を愛する人にとって、こんなに幸せを体感できる場所はないんじゃないだろうか。
いちゃもん、いや、問題を指摘するのが得意なわたしのこと、いま世界の潮流になっているバリアフリー化はどうなるかと考えてしまう。
建物そのものが美術品であるエルミタージュでは、むやみやたらにエレベーターやエスカレーター、スロープなんかをこしらえるわけにはいかない。
そうかといって身障者の方々の中にも、ぜひエルミタージュをその目で観たいという人がたくさんいるだろう。
これはむずかしい問題だな。
月面探検車のように、人間を乗せたままあらゆる場所を観てまわれる、電動車椅子の完成が待たれる。
いや、けっしてわたしが階段を上がったり下りたりしてくたびれたからいうわけじゃないんだけどね。
見学しながら歩いていると、ブラインドのかかった窓があった。
ブラインドなんかかけられると、のぞいてみたくなるのがわたしの悪いクセだ。
すきまからのぞいてみたら、すぐ下に氷結したネヴァ川が見え、対岸に火のついたふたつの塔が見えた。
これはヴァシリエフスキー島にあるロストラの灯台塔というものらしい。
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