ロシアの旅/雪おろし
かほりクンのような美少女に案内してもらえるだけでもありがたいのに、道々彼女のそぶりを見ていると、わたしがはぐれてないか、段差でつまづかないかと、ひじょうに気を使ってくれていることがわかる。
こんな年齢差のある若い娘に気を使ってもらうなんて、生まれてから現在までいちども経験がないし、これからもぜったいにありそうにない。
不遇なおじさんとしては感謝感激あめあられである。
道を歩いていると、よく道路のわきにぴらぴらしたテープが張られていることがある。
かほりクンが危ないから注意してくださいという。
このテープはこのわきの建物で雪おろしをしているから注意しろというしるしだった。
冬のモスクワではとうぜん建物の屋根に雪が積もる。
雪の重みでつぶれるようなやわな建物はないにしても、積もった雪を放置しておくと、それは凍りつき、やがて軒にせり出してくる。
これは大変危険というわけで、雪おろしをするのである。
クレムリン散策のおりにこの国のセーフティネットにふれたことがあるけど、これも国家の重要な任務のひとつだろう。
個人の家なら雪おろしは家の住人がやるだろうけど、4階だ5階だという高い建物になるととても個人では手におえない。
高層ビルの窓ふきのように、これはもうプロの仕事だ。
トレチャコフ美術館に行くとき、とある建物で雪おろしをやっていた。
写真を撮ろうとしたら屋根の上の男性が手をふった。
この余裕はとてもしろうとには真似できないことである。
ロシア人もなかなか愛想がよい。
熱心に雪おろしをしている割には、道路にそんなに雪がうず高く積まれているわけでもない。
寒冷の地とはいっても、日本の上越や北陸ほど雪の量は多くなく、さらに雪上車はひと晩中活躍しているし、朝になるとあちこちでおそろいのユニフォームの男たちが雪かきをしているのである。
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