ロシアの旅/キリストと罪人
つぎにあげたのもサロン絵画といっていい縦3メートル、横はその倍くらいあるでっかい絵だ。
人々の服装からするとどこか中東あたりの風俗画にみえるけど、なにかカワイ子ちゃんがイタズラをやらかして、群衆に警察まで引き立てられていくところのように見えたから、美人にはすぐ感情移入してしまうわたしの気になっていた絵である。
帰国して調べてみたら、ヴァシリー・ポレノフという画家の絵で、タイトルはこれも 「キリストと罪人」 というらしい。
じっさいにこの絵の左のほうにキリストらしい人物も描かれているから、なにか聖書の中の一場面らしいけど、これだけではどんな場面なのかさっぱりわからない。
さらに調べてみたら、このカワイ子ちゃんは不倫をしたのだそうである。
日本やロシアでは、江戸時代もロマノフ王朝のころも、不倫なんてぜんぜん罪にあたらなかったけど、イスラム圏ではこれは死刑に値する重罪だ。
現在でもそういうことはあるみたいで、YouTube には銃殺される女性の映像も載っているし、すこしまえには亭主の暴力にたえかねて実家に帰っちゃった若奥さんが、耳と鼻をそがれちゃったという事件もあった。
どうも女性に厳格すぎるのがイスラムの欠点だよな。
この絵を観て、わたしの意見をいわせてもらうと。
まん中にいて地面を指さしているのが、若い娘をたくさん嫁にかかえた金持ちのじいさんで、右の引き立てられているカワイ子ちゃんはじいさんの嫁のひとりだ。
こんなじいさんを相手にしていたのでは、たまには不倫もしたくなるだろうと、わたしはカワイ子ちゃんに同情してしまう。
カワイ子ちゃんにはおさななじみの、たぶんイケメンの、若い恋人がいた。
彼とたまたま再会する機会があり、もうたまらずに姦通してしまったところ、彼女に横恋慕する男がいて、じいさんにことの次第を密告した。
この絵の中で、カワイ子ちゃんの背後に、歯をむきだして娘の顔をのぞきこんでいる男がいるけど、これが横恋慕男かもしれない。
怒り狂ったじいさんは、ただちに石打ちの刑で娘を処刑しようとしたのだが、たまたま当地に偉大な聖人が行脚してきていることを知り、娘を彼のまえに引き出して、アンタならどう落しまえをつけるかと質問しているのが、この絵だろう (違っていたらゴメンナサイ)。
キリストも困るよな。
こんな難問を持ち込まれて。
法律にのっとって死刑にしてしまえといったのではあとあとの聞こえが悪いし、右の頬を打たれたら左の頬をさし出しなさいといったらじいさんが怒るだろう。
画家もまさかそんなきびしすぎる法律を肯定するつもりで描いたわけではないだろうから、深読みすればこれもロシアの芸術らしく、厳格すぎる政府に抗議するという反体制の意味がこめられているのかも。
けっきょくこの結末がどうなったのかわからないけど、カワイ子ちゃんのその後が気になって仕方がない。
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