ロシアの旅/最後の関門
ジプシーダンスを観たあと、かほりクンとプーシキン駅で別れてホテルにもどる。
階段を上がった5階の踊り場で、黒装束の娘が向こうむきでタバコをふかしていた。
レイナだった。
こんなところをみると、やっぱりパンク娘である。
部屋にもどってくつろいでいるうち、ビールが飲みたくなった。
ホテルから200メートルほどはなれた場所にコンビニを発見していたけど、たったそれだけでもまた防寒着に着替えて行くのはおっくうだ。
パンクのレイナにビール置いてないかと訊くと、おおげさに両手をひろげて、オー、ノーという。
仕方がないから買い置きのカップラーメンを食べて寝ることにした。
こうしてロシア最後の夜は更けていく。
しかしわたしには最後の関門がひかえていた。
わたしは明日の昼11時にはホテルをチェックアウトしなければならないのだけど、飛行機は夜の9時発である。
Mさん夫妻とは、その時間に空港で落ち合うことになっている。
夕方6時には空港に行くとしても、昼にチェックアウトしてからそれまでどうやって過ごせばいいだろう。
ま冬のロシアでは公園で昼寝しているわけにもいかない。
喫茶店でねばるにしても5、6時間は長すぎる。
そんならどこか見物にでも行けばいいではないかといわれそうだけど、トラブルでもあったら困るから、旅行最終日はなにもしないのがわたしの主義なのだ。
こういう状況は中国で何度も経験しているけど、これはけっこうツライことである。
もうひとつは自分ひとりで空港まで行かなければいけないこと。
かほりクンと別れるとき、頼んでみればよかったけど、すでにかほりクンにはこの日までのガイド料をぜんぶ支払ってしまっていた。
空港まで送ってもらえないかと、それとなくほのめかしてみたけど、空港は遠い。
あまりうれしくなさそうだったので、それ以上頼めなかった。
えい、くそ。
ひとり旅ならどっちにしても自分でやらなけりゃいけないことだと開き直る。
地図とメモを片手に、あっちこっち尋ねながらでも空港に行くしかない。
さいわいロシア人は親切だから、なんとかなるだろう。
そんな決心をしたころ、Mさんから電話がかかってきた。
わたしの窮状を聞きつけたかほりクンの母親から伝言があり、明日はホテルをチェックアウトしたあと、かほりクンの家で昼食をとりながら、夕方まで時間をつぶせばいいだろうとのこと。
しかもかほりクンの母親が空港まで送ってくれるという。
わたしは確信した。
最後の最後までこの旅はツイていたのだ。
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