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2013年4月 6日 (土)

ロシアの旅/車窓より

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サプサン号の欠点は座席が固定されていて、サンクトペテルブルクから乗ると、進行方向とは逆に、後ろ向きに坐ることになることだ。
おかげで過ぎ行く景色を後追いでながめるような塩梅になるけど、サンクトペテルブルクを去る旅人にはこのほうがふさわしいかもしれない。

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サンクトペテルブルクを出発してすぐ、線路のわきにシラカバにかこまれた大きな墓地があるのを見た。
無数の十字架が雪に埋もれていた。
なかなか由緒ある墓地らしいから、埋葬されている人たちもかなり長期にわたっているだろう。
つまりここにはロシア革命からソ連、ロシアへと変遷した歴史そのものが埋まっているといっていいのではないか。
死者たちは生前にいったい何を見たのか。

この旅では、わたしはあちこちで尋ねてみた。
ソ連時代のロシアではひどい目にあったんじゃないですかって。
日本人ならたいていの人が、そのころの抑圧的な政治、モノ不足の社会、硬直した官僚主義、文句をいったら即ラーゲリか粛清だったなんてことを知っているはずだ。
ところがわたしが聞いたかぎりでは、あまりソ連時代を悪くいう人がいない。
人間は過去の痛みをすぐ忘れ、現在に不満を持ちやすい動物だから、いくらか割り引くとしても、これでは日本人が思っているほど悲惨な社会ではなかったんじゃないかと思えてしまう。
これは西側のプロパガンダだったのかも。
やっぱり現地に行ってみなけりゃわからないことは多いようだ。

ついつい関係ないことを考えてしまうのは、なにしろたったひとりで4時間の旅だ。
空想にふける時間も妄想にひたる時間もたっぷりあるのである。

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雪とシラカバのロシアの墓地はなかなかすてきだった。
わたしは墓地の中をぶらぶらするのが、それが自分とはぜんぜん関係ない墓でも、好きである。
三途の川から迷い出た亡者みたいで、そりゃおまえもそろそろ棺桶に片足つっこんでいるからだよといわれてしまいそう。
でもこういう性格は若いころからのものだからねえ。
だから田舎にハイキングにいってお墓があったりすると、つい寄り道をして碑銘を調べてみたりしてしまうのである。

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とちゅうウトウトしたこともあったから見逃したかもしれないけど、サンクトペテルブルクとモスクワのあいだに大きな街はあまりないようで、サプサン号は農村や原野の中をひたすら疾駆していく。
森や林や広々とした平原や、おもちゃのような家が集まった村落がつぎつぎと現われる。
そんな農家をながめておとぎ話の小人の家のようだなあと思う。

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列車の単調なピッチにひたりつつ、まだいろんなことを考える。
かほりクンも金髪クンも、サンクトペテルブルクには行ったことがないといっていた。
モスクワに住むロシア人にさえ、そこは遠いところらしい。
やはり、誰がなんといってもわたしは幸運だったのだ。

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モスクワが近くなったところで列車はがらがらと鉄橋を渡った。
まわりは広々とした雪原で、これはヴォルガ川の支流が湖になっているところらしい。
空想も瞑想もそろそろ終わりにしなければならない。

サプサン号の車窓から見た映像を1分ほどのショートフィルムにしてあるので、興味のある方は YouTube を 「サプサン号の旅」 というキーワードで検索するか、以下のアドレスから
http://www.youtube.com/watch?v=IxUjIozYXa4

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