ロシアの旅/スターリン様式
翌日、というと旅の13日目だ。
この旅もこの日を含めて、いよいよ残すところ3日になった。
この日はとくに予定がないから、まえに見逃したクレムリンのウスペンスキー大聖堂でも観てくるかと考えた。
ところがかほりクンに先手をうたれてしまった。
動物園を見たくないですかという。
大聖堂が動物園ではだいぶ調子の狂うところがあるけど、動物園もキライではないから、まあ、いいかと思う。
バリカードナヤというメトロの駅で下車。
地上に出ると、目の前にどかーんとスターリン・クラシック様式の巨大なビルがそびえている。
スターリン様式というのは、ニューヨークの摩天楼にコンプレックスを抱いていたスターリンが、向こうに負けないものをとこぼすと、ソ連時代の官僚システムではハナシが早いから、たちまちモスクワ市内に7つも建ってしまったビルだ (そうだ)。
形はエンパイア・ステートビルや、新宿のNTTビルみたいな、先のとんがった古風なスタイルのビルと思えばいい。
古典主義様式の他のビルとちがって、タッパがあるから、モスクワではよく目立つ。
「モスクワは涙を信じない」 という映画の中に出てくるビルだそうだけど、わたしはまだその映画を観ていない。
いまはホテルにでもなっているのかねえとかほりクンに訊くと、わかりませんという。
帰国してから調べてみたら、バリカードナヤ駅のまえにあるのは文化人アパートというものになっていた。
原宿表参道にあった同潤会アパートみたいなもんかと思いつつ、ロシア政府は文化人とそうでない人をどうやって見分けるのかなあなんて考える。
べつにこんなものを見たくて行ったわけではないから、写真だけ撮ってさっさと動物園へ移動した。
動物園の入口はバリカードナヤ駅から100メートルぐらい。
この日はロシアに来て以来、はじめての本格的な雪になった。
雪の動物園というのは恋愛映画の舞台みたいで、劇的にムードがあっていい。
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