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2013年4月12日 (金)

ロシアの旅/思い

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嬉々としてゾウをながめているかほりクンを後ろからながめているうち、考えさせられてしまったことがあった。
彼女は19歳の大学生だけど、5歳のときに両親が離婚して、それ以来母親といっしょにモスクワで暮らしている。
そういう境遇の娘が父親を恋しく思うことはないのだろうか。

わたしはずっとむかし、仲間といっしょに出かけた温泉で、同じような境遇の小学生の女の子に出会ったことがある。
この少女は父親がいないことをひじょうに悲しく思っていたらしく、わたしが独身であることを知ると、ウチのお母さんと結婚してといいだした。
そんな気がなかったから相手にしなかったけど、彼女は別れぎわにわたしにむしゃぶりついてきたものである。
どうもわたしみたいな人間には理解しにくいけど、両親がそろっていない子供たちの悲しみは、はたからみるよりずっと大きい (場合もある) のかもしれない。

かほりクンは、本来の父親という人といまでも多少の連絡はあるようで、彼女が大学に入ったときいくらかの援助を要請したところ、アルバイトをしなさいという返事がきたそうである。
これについてかほりクンはいまでもわだかまりを持っているようだった。

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そんなことは別にして、かほりクンはロシアを見物にきた大のおとなを、なんで動物園なんかに引っ張り出したのだろう。
気持ちをストレートにあらわさない娘だから、本心はわからないけど、ひょっとすると父親といっしょに動物園に行くというのは、彼女がずっと抱き続けていた夢だったのかもしれない。
わたしは彼女の父親の役割を担わされているんじゃあるまいか。

わたしにはときどき自分を主役にしたヒューマンドラマを、勝手にデッチ上げるという性格上の欠陥がある。
だからわたしの想像を本気で信じてもらわなくてもかまわないけど、いろんなことを総合すると、どうもそうではないかと思わされるフシがある。
そんならそれでもいいさと思う。
自分の娘を連れて動物園を見てまわるというのは、わたしにとっても人生で初めての、ひじょうに珍しい体験なのだ。

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ゾウ舎の外に出ると、雪がしんしんと。
ラブロマンスの舞台には絶好の風景なんだけどね。

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