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2013年7月12日 (金)

八重山行き/ヨタ話の4

海の中にはちょっと信じられない出来事がたくさんある。
その例としてまず、他の魚の体表についた寄生虫を食べることから、海の掃除屋さんとして知られるホンソメワケベラのことを挙げてみよう。

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せわたしも見るまで信じられなかったけど、この魚が (たいてい2匹で) ちょろちょろしているところでは、ふだんなら食ったり食われたりという関係の魚までが、おとなしく並んで掃除してもらう順番を待っているのである。
ウツボのような凶悪そうな魚まででっかい口をあけて、体長10センチほどの小さなホンソメワケベラに歯のすきまを掃除してもらう。
まるで童話みたいだけど、これは本当である。
ダイビングをしたことのある人なら、この掃除屋は伊豆あたりでもけっしてめずらしい魚ではないことを知っているはず。

お客さん商売であるから、床屋が赤と青の看板をくるくるまわすように、ホンソメワケベラはよく目立つファッションをしている。
ところが他人の商売がうまくいくと、それにあやかりたいと考えるのは魚もいっしょ。
派手なホンソメワケベラとそっくりなファッションで、じつはほかの魚をかじってしまおうという不届きな魚もいるのである。

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エビの仲間 (ほんとはそうじゃないんだけど) のシャコという動物がいる。
寿司ネタとしてもお馴染みで、色彩の派手なものもいて、水中撮影のいい被写体になったりするけど、大きいやつは30センチ以上になる。
じつはこいつはものすごい乱暴者であるから、このサイズになると注意しなくちゃいけない。
わたしはBBCのドキュメンタリーでシャコがガラス板をたたき割るのを見たことがある。
借金の取り立てにきたヤクザみたい。
信じられないかもしれないけど、これホント。

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わたしの友人に海水魚を飼うのが趣味という人間がいて、水槽の中に魚たちとともにムラサキハナギンチャクというものを入れておいたそうだ。
これは長い触手をもったきれいなイソギンチャクで、これが水槽の底でゆらゆらと腕をふっているところなんか、花が咲いたみたいで、涼しそうでなかなかすてきである。
しかし、イソギンチャクはイソギンチャクだ。
ある日帰宅したら、いっしょに飼っていたチョウチョウウオがハナギンチャクに食べられてしまっていた。
それが、二つ折りにされて、お腹の中におさまっているのが透けて見えましてねと友人の弁。
油断もすきもないという話。

イソギンチャクやクラゲは魚たちにとって大敵のはずだけど、クマノミのようにその触手のあいだを平然と泳ぐ魚もいる。
ふつうならしびれて食べられちゃうはずで、人間にとっても危険きわまりないカツオノエボシにも、その足のあいだを隠れ家にしている魚がいるのである。
いったいどうして平気なのかといろいろ研究していた学者が、試しに死んだカツオノエボシにこの魚をくっつけたら、ぴりぴりっとしびれてしまったそうだ。
死せる孔明生ける仲達をしびれさすってところで、どうもさっぱりわからんね。

もっとすごいのは、このカツオノエボシをばりばりと食べちゃって、しかもその刺胞を体内に取り込んで、クラゲの毒針を自分の武器にしてしまうアオウミウシなんて動物である。
これはあらゆるものに天敵がいるという見本だし、食ったり食われたり、しびれたりしびれさせたり、海の動物たちの相関図はトッテモ複雑であるという証明なのだ。

添付したのはネットからの収集で、上からホンソメワケベラ、シャコ、ムラサキハナギンチャク。

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