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2013年8月14日 (水)

危険な兆候

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ミャンマーよ、おまえもかと、旅行会社のなげき節が聞こえてきそうな今朝の新聞。
エジプトやトルコが政情不安で、ドル箱を失って困っている旅行会社に、今度は平和な観光立国であるはずのミャンマーがおだやかじゃなくなるかもしれないうわさ。

今朝の新聞の1面に、赤い衣装のミャンマーの坊さんの顔をあしらった米タイム誌の表紙が。
タイム社が表紙にあつかう人物は、良きにつけ悪しきにつけ、問題人物であるのが普通だけど、この坊さんには 「仏教テロの顔」 というキャプションつき (添付した写真の左側のシト)。

記事によると、反イスラム仏教徒としてけっこう過激な発言をしている坊さんだという。
仏教徒というのは世界の3大宗教の中でもっとも穏健な人たちだと思っていたけど、ミャンマーのこの坊さんはそうではないらしい。
『野生の象と人間はいっしょに住めない。 追い出さなければ人は殺されてしまう』
これがイスラム教徒に対する彼の信念だ。

この坊さんを見ていて、すぐに旧ユーゴスラヴィアで民族紛争をあおったスロボダン・ミロシェヴィッチという男のことが思い浮かんだ。
米タイムがわざわざ表紙にあしらったのも、おそらくわたしと同じことを連想したからだろう。

ミロシェヴィッチは多くの民族が入り混じる旧ユーゴの中で、セルビア人の代表として、他の民族を排除する民族浄化ということを始めた大統領である。
つまり旧ユーゴの中のいち共和国であるセルビア領内に、(それまで平和に共存していた) 他の民族の存在を認めないといいだした男だ。
これがやがて他の共和国にも飛び火して、旧ユーゴの紛争は第2次世界大戦以降で最悪という殺し合いに発展してしまう。
『人権を叫ぶ人たちはイスラム教徒の側にだけ立っている』
これは坊さんの発言だけど、ミロシェヴィッチが民族対立をあおったときの発言とまったく同じである。

これを危険視したタイム社が表紙に取り上げると
『私の敵はタイム誌という武器を使って反撃してきた。 私がいなければミャンマーを自分のものにできると考えているからだ』 という。
オイオイオイというところ。

ミャンマーに旧ユーゴと同じような民族 (この場合は宗教) 浄化の嵐が吹き荒れるかどうかわからないけど、これはひじょうに危険な兆候である。
現在は世界中に不平不満がくすぶっている時代なので、こうした坊さんの過激な発言がきっかけになって、やがて手のおえない怪物に成長することがあり得るのである。

困る、困ります。
わたしもそのうちミャンマーに行ってみたいと思ってますんで。
お坊さんの本分はお経を上げることと、煩悩のかたまりみたいな大衆をなだめることにあってほしいやね。

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