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2013年9月25日 (水)

たびの素

499

古い写真や手紙を整理していたら、むかし知り合った若い娘からの手紙が出てきた。
なにしろむかしだから、若い娘がいまでも若いままであるはずはない。
だから焼けぼっくいに火なんてことを期待されても困るんで、今回のブログはまったく過去の思い出だけのハナシである。

この娘と知り合ったのは小笠原へダイビングに行ったときのこと。
彼女は島内の焼き鳥屋でアルバイトをしていた。
キモ、タン、ハツなんかを食いながら聞いたところによると、彼女は気のむくままに、日本各地、そして海外へふらりと出かけて、しばらくアルバイトをしながら生活するという、旅好きなわたしにとって理想みたいな生き方をしている女の子だった。
そんな生き方ができる幸せな時代もあったのである。

といって、この娘が身をもちくずしたフーテンというわけでもない。
彼女は自分の体験を 「たびの素」 という、マル文字だらけの手作りみたいなミニコミ誌にして、定期的に刊行しているきわめてまじめ (かつ積極果敢かつ社交的) な娘だった。
つまり異国を知りたいという知的探究心と、フリー・ジャーナリストへの夢を同時にかなえちゃっている、なかなか見上げたこころざしの娘だったのだ。
添付した画像はそのミニコミ誌の表紙の一部で、じっさいの彼女はここに描かれている娘より丸っこい。

小笠原からもどったあと、写真を送るついでにつまらないことを書いてやったら、彼女はわたしの中に共通の趣味を見出したらしく、しばらく文通が続いた。
メキシコから手紙をもらったこともある。
わたしがはじめて海外に出かけたのは、彼女と知り合ってから10年ちかくあとで、そのころにはずぼらなわたしはもうこの娘と疎遠になっていたから、わたしのほうが外国から手紙を出したことはなかった。

ひょっとするとミニコミ誌からホームページやブログに切り替えた可能性もある。
そう考えてネットで検索してみたけど、「旅の素」 はあっても 「たびの素」 という言葉はひっかからない。
ゴムマリみたいに元気よく跳ねまわっていた娘は、夢や理想に燃えた一時期を卒業して、いまでは子供をかかえたどこかの主婦にでもなっちゃってんだろうか。

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