ジム・ホール
今日の夕刊にシャズ・ギタリスト、ジム・ホールの訃報。
それで以前書いておいたブログ記事を思い出した。
団塊の世代にとって、ジム・ホール Jim Hall という有名人は2人いる。
ひとりは今回亡くなったギタリストのジム・ホール。
ネットで検索してひっかかるのは、ほとんどがギタリストのほうのジム・ホールだ。
わたしがギタリストのホールを知ったのは、エラ・フィッツジェラルドのベルリン・ライブを聴いたときだった。
エラはここでわたしの好きな 「サマータイム」 を歌っているけれど、この曲の背後にとてつもなく甘いギターが流れる。
ほんのわずかな伴奏だけど、じつにいい感じなので、このギターは誰なのかと関心をもったのがジム・ホールとの出会いだった。
その後、彼のレコードを何枚か買ってみた。
その中でとくにほれこんだのは、ビル・エバンスとデュオである 「アンダーカレント」 で、ギンギンのロックを鼓膜が破れるほど聴いていると、たまには正反対の音楽が聴きたくなるものだけど、このアルバムはそうしたときにぴったり。
「アランフェス組曲」 のような彼がリーダーのディスクもあったけど、どうもホールという人は伴奏者や共演者になったときのほうが実力を発揮するタイプのようだ。
さて、もうひとりのホールは、シャパラルという前衛的なレーシングカーで、スポーツカー・レースに挑戦し続けたカー・レーサーのジム・ホール。
わたしがまだ若いころ、ル・マン24時間レースの写真をながめていたら、リアに巨大な翼をつけたレーシングカーが、ダンロップブリッジのあいだから姿を現わしたものがあった。
これがシャパラルで、翼はやがてレーシングカーの大半に乱立するようになるけど、このころまだそんなものをつけた車なんてほとんどなかったから、そりゃ目立った。
レーサーのジム・ホールは、なんでもテキサスの石油成金だそうで、そのせいか、金にいとめをつけない自由奔放なアイディアをつぎつぎと実践してしまう人だった。
シャパラルはしまいには真空掃除機の原理を利用して、地面にぴたりと貼りつくというとてつもないレースカーに発展する。
しかも吸い込んだ小石やゴミを後方の車にあびせるという荒わざを備えており、ほかのレーサーから苦情が出て、この珍奇な発明が禁止になっちゃったのは、それが原因らしい。
残念ながらレースの結果よりもアイディアのほうが先行する場合が多かったようだけど、わたしにとっては2人のホールは甲乙つけがたい魅力をもった人である。
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