ロシアⅡ/恋人たち
環状線と2号線を乗り継ぎ、あっという間にホテルにもどって、部屋に入ると床の上にフロントからの連絡用紙が置いてあった。
留守中にあなたの友人から電話がありましたとのこと。
そちらからの連絡を待っていますということで、電話番号が書いてある。
はて、誰だろう。
いっしゅん美少女ガイドのかほりクンかと考えたけど、彼女はソチのほうに行ってるはずである。
かほりクンでないとすれば、可能性のあるのはもうひとりの友人だ。
かってわたしのアパートの階下に住んでいた金髪クンが、モスクワに里帰りして3年になる。
彼にモスクワを訪問することを伝えてあったから、電話の主は金髪クンにちがいない。
こちらから電話してみると、聞き覚えのあるあきらかな声で、元気ですかという。
やはり金髪クンで、あとで部屋に遊びに来るという。
夜の7時ごろになりますけどいいですかというから、OKといっておいた。
夜になって、彼は恋人だという若い娘をいっしょに連れてきた。
すでに観光には遅い時間だったから、この日は3人で連れだって晩メシを食うことにした。
ホテルのまわりにはいい店がないから、メトロでトレチャコフ美術館に近いノヴォクズネツカヤ駅まで出て、美術館の近くの店に入った。
ここは観光客が多いからいろんな店があるのである。
金髪クンの案内でレストランに入ったのが夜の8時ごろ。
門から建物の玄関まで距離があって、青山、西麻布ふうな雰囲気の店だったけど、そろそろ店じまいの時間だそうで、客はわたしたちだけだった。
店の名前に 「カザン」 という言葉が入っていたから、あとで調べてみたら、この名前はロシア連邦に属するタタールスタン共和国の首都のことで、タタール文化の中心であるとかなんとか。
タタールというと、「タタールの軛 (くびき)」 なんて言葉があって、わたしにはモンゴル系の民族みたいな印象がある。
モンゴル系の料理ならとうぜんヒツジの焼肉だ。
金髪クンも、この店ではヒツジの串焼き肉が美味しいですという。
なんでもいいやとわたし。
若い2人のために、おじさんがワインをおごるからといってみた。
注文してみたら、ありませんという。
ビールはと訊くと、それもありません。
なんだなんだ! ここはイスラムの店かあとわめく (腹の中で)。
帰国したあと、ウクライナとロシアのあいだでトラブルが生じて、クリミア・タタールなんて言葉が出てきた。
タタールという民族はかなり複雑で、イスラムに帰依したのもいるらしい。
けっきょくノンアルコールのまま、羊の串焼き肉とチャーハンみたいなものを食べた。
それなり美味しかったけど、お酒がないんじゃ退廃した資本主義国の住人向きの店じゃない。
金髪クンは酒を飲まない人間だから、最初からこの店を目当てにしたらしい。
もう遊んでやんないぞ、コノ。
食べ終わってトレチャコフ美術館のあたりをぶらぶらした。
美術館の通りはライトアップされてとてもきれい。
ふだんこのブログに自分の写真は載せないようにしてるんだが、ここで1枚だけ、美術館とミスター・トレチャコフとともに撮った写真を載せてしまう。
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