ロシアⅡ/学生寮
学生寮を見たくないですかと金髪クンが訊く。
見たい見たいとわたし。
寮へ入るためには、入口でパスポートを提示して許可証を作らなければならない。
入口にはブルドックのような警備員がいる。
ノーテンキで平和な顔のわたしは問題なく通過。
がたぴししたエレベーターを上がると、ソファの置かれた部屋があって、ここは両親や知り合いが訪問してきたとき懇談するところですと金髪クン。
かたわらの部屋は寮母さんが詰めているところだそうだ。
寮母さんというのは学生の親代わりで、ものすごい実力を持っているらしい。
金髪クンの彼女が家庭教師のアルバイトをしたとき、業者に給料を払ってもらえなかったことがあり、寮母さんに直談判をしてもらったという。
外国から来た女子学生が、街の両替屋でお金をごまかされたときには、寮母さんが怒鳴り込んでお金を取り返してきたそうだ。
そんな寮母さんのひとりと記念写真を撮った。
さぞかし怖そうな人かと思ったら
いいのかしら。
わたしといっしょに写真を撮ったら、この人の奥さんがやきもちをやかないかしら、と冗談をいっていたそうだ。
正直にいわせてもらうと、寮はけっしてきれいな建物ではない。
基本的にはコンクリートだからガタピシするわけじゃないけど、廊下なんかひと昔まえの日本の木造アパートみたいで、はだかで騒ぐ北大の学生寮みたいにバンカラな感じ。
でも学生の本分は学問をするところと考えれば、日本の学生みたいに、学生寮をホテルかマンションと間違えているところよりはいいと思う。
そういう贅沢を支える親の気持ちを代弁して。
この大学の寮はおおむね個室だけど、部屋はせまい。
金髪クンの部屋の窓辺には野菜の鉢がならべてあった。
べつに寮生の使えるキッチンがあって、金髪クンは自炊もしているそうである。
男女の部屋は別々でも、それほど厳格に仕切られているわけではなく、同じフロアに男部屋、女部屋がある。
べつの部屋から金髪クンの恋人という若い娘も顔を出した。
うらやましい青春である。
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