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2014年4月22日 (火)

漱石の本

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前項で夏目漱石について書いたけど、わたしはしごくまっとうなファンであるので、じつは彼の本をすべて読み通したわけじゃない。
ここでわたしの読んだ漱石の本で、好きなもの、そうでないものを上げてみよう。
なんで好きなのか、そうでないのかと書き始めると文学論になってしまい、それはひじょうに頭を使ってしまう。
そんな苦労をしたって一文にならないブログだから、理由は書かない。
わたしの、ただの漱石遍歴である。

わたしがいちばん読んだのは、たぶん 「猫」 だ。
つまり 「吾輩は猫である」 である。
この本は文庫本としても読みごたえのある分量で、しかもどこを切ってもおもしろいというバウムクーヘンみたいな本なので、しょっちゅうつまみ食いみたいな読み方をしていた。
忘れたころにまた読みたくなるので、手垢でよごれた文庫本は、過去に3、4回は買い直していると思う。
余計なことをつけ加えると、角川文庫のそれには、初版当時の中村不折と橋口五葉のイラストがついており、これがユーモアがあってとっても味わいがある。
わたしは角川より新潮文庫のファンなんだけど、この点だけは角川に軍配を上げなくちゃ。

「坊ちゃん」 については、これは愉快だけど、純然たる小説であるから、いちど読めば内容がわかってしまい、また読みたくなるまで時間がかかるので、「猫」 ほど熱心に読んだわけじゃない。
「草枕」 は旅行好きなわたしにとって、ある種のあこがれみたいな旅を描いた本なので、いまでも旅行に持っていったりする。
「三四郎」 も失意に終わる青春小説だから、失恋ばかりしていたわたしの愛読書だったねえ。

ちょっと意表をつくところでは 「夢十夜」。
うまく文章で表現するのがむずかしいけど、見ているときは現実、覚めてみるとあり得ないという、ほんとうに夢のようにとりとめのない文章で、漱石ってのはこういう作家だという固定概念を持っていたわたしは、彼の新しい部分を発見したような気分になったものだ。

その後の漱石については、だんだん読みにくくなり、まともに読んだのは 「坑夫」、「こころ」 ぐらい。
「虞美人草」、「それから」、「門」、「彼岸過迄」、「行人」、「道草」、「明暗」 なんて作品になると、目を通したはずだけど、ほとんど内容は記憶にない。
むしろ 「文鳥」、「永日小品」、「思ひ出すことなど」、「硝子戸の中」 のような、自分の体験をそのまま書いたエッセイみたいなものをよく読んだ。
「猫」 もそうだけど、どこから読んでもそれなり味わいがあっておもしろいっていう本は、つまりエッセイのようなものは、わたしみたいなさすらいの本キチにはぴったりなのだ。

こういう調子だから、わたしはけっして漱石についてエラそうなことはいえない。
しかし、いまでも村上春樹を読むくらいなら、漱石のほうを読みたいと思う。
えっ、トシがわかるってか?

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