ロシアⅡ/ハチミツ市場
公園のゲートに向かって歩いていたら、かたわらにハチミツ専門の市場があった。
ロシア人のハチミツ好きは、ちょっと日本人には考えられないくらいで、常設の市場以外にも、夏になるとあちこちの屋外に市場が立つらしい。
市場に興味のあるわたしはここにも寄っていくことにした。
この公園の市場はパイプを組んだ屋根つきの常設市場で、畳2枚くらいのスペースの小さな店がたくさん集まっている。
店主はたいていひとりで、養蜂業者の奥さんあたりが経営しているらしかった。
わたしはハチミツというと、花の名前を冠した、琥珀色のどろりとした半液状のものしか思い当らないけど、ここにはこれがハチミツかといいたくなるような製品もある。
白や灰色やベージュの半練り状で、わたしの知っているものとは色も形状もだいぶちがう。
それぞれの店でなにかをブレンドして、その店独特のハチミツを作ってしまうらしい。
それが安っぽいプラスチックの容器に入っていたりするから、どうみても大企業によるマスプロ商品じゃない。
ローソクや石鹸のようなハチミツの副産物も売られていて、日本みたいに添加物や混ぜ物にうるさいことをいわなければ、見ていてなかなかおもしろい。
日本人ですというとみんな親切であるところは他の市場と同じだった。
耳かきみたいなスプーンでなめてみろと勧められる。
店が多いから全部の店でそんなことをしていたら日が暮れてしまう。
それでも何回かお店の勧めにしたがって、はあはあ、なるほどと味わってみた。
日本ではあまり見たことのない松の蜜というのがあって、これは苦味のある甘さ。
栗の花の蜜もあった。
蜜からはぜんぜんその匂いはしないけど、栗の花には青春の象徴みたいな、独特の匂いがあるなあと金髪クンに話す。
種類だけではなく、産地もさまざまらしい。
最後の写真に写っているお母さんの後ろのポスターには、「アルタイ山脈」 「シベリア」 と書いてある。
シベリアの蜜ですよと金髪クンがいう。
シベリアというと雪と氷というイメージで、そんなところにも花が咲くのかと思ってしまうけど、うん、咲くんだろうな。
北アルプスだってお花畑があるんだから。
わたしは中国の僻地で見たハチミツ売りのことを思い出した。
チベットに近い青海湖のあたりでは、季節によっては地平線の彼方まで黄色い菜の花が埋め尽くし、スペインのヒマワリかそれ以上の景観になる
菜の花は中華料理で使われるナタネ油を採るためだけど、副産物としてハチミツの採集も行われていて、それが路傍で石油缶サイズのポリタンクで売られていた。
わたしもハチミツは好きだけど、とても買おうって気になれない量だ。
日本のように流通経路や道路のインフラが整備されていない中国では、大量消費地まで運ぶのが大変なので、けっきょく道路ぞいで観光客相手に売るしかないようだった。
金髪クンは健康食品にうるさくて、天然食品や有機栽培にこだわり、アルコールさえ口にしない若者だけど、シベリアのハチミツがえらく気にいったようで、あとであのおばさんの店にまた来ようなんていっていた。
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