西表島/青と白の海
シュノーケリングをしていて、崎山湾からべつの場所に移動するとき、海底がブルーと白にくっきりと分かれて、まだら模様にみえる美しい海域を通過した。
ここに載せた写真はむかし宮古島で撮ったものだけど、ちょうどこんな感じ。
青い部分はサンゴか海底の岩だろうけど、白い部分はひょっとすると砂かもしれない。
だとすればどうなっちゃうのか。
むかし伊豆の雲見でダイビングをしたことがあり、そのとき砂浜から海に入ったことがある。
砂浜だから潜水してもしばらくは砂地が続く。
砂地の海底というのは生きもののバラエティーが少なくておもしろくないと考えているダイバーが多いようだけど、砂地には砂地に生きる動物がいて、これはなかなか興味深いものである。
わたしは砂地で尻尾から砂にもぐるアナゴを見たことがあるし、トラフカラッパというめずらしいカニを見つけたこともある。
そんな砂の海底の一か所に、ひとかかえほどもある岩が顔を出していた。
岩には海藻、石灰藻、ヒドロ虫類やホヤなどがからみつき、小さな魚がまわりに集まって、それをねらうこぶりなトラウツボや、ミノカサゴまでが岩の周辺に棲みついていた。
つまり、この岩だけで生命の小宇宙が形成されていたというわけだ。
こういうポイントはナチュラリストにとって興味がつきない。
「2001年宇宙の旅」を書いたSF作家のアーサー・C・クラークは、海の中のそうした宇宙について、その生きものの多様性、複雑怪奇なこと、これまでSF作家が描いたいかなる辺境の惑星もおよばないといっている。
たしかにサンゴやウミシダ、ウミユリが動物で、しかもひじょうに貪欲に他者を捕食しているなんて、いったい誰が思いつくだろう。
SF映画はすべからく海の動物にアイディアを求めるべきではないか。
ひょっとすると西表の青と白に分かれた海は、白い砂の上に上記のような小宇宙が点在するものかもしれない。
だとすればこのあたりの海底は、小宇宙が集まった大銀河系ということになるではないか。
いったいどんな宇宙人が棲んでいるだろう。
という興味で、貸し切りであるのをさいわい、船をとめてもらって、この海域で素潜りをしてみることにした。
で、潜った結果は。
ちと期待はずれ。
ここに載せた写真がそれだけど、青い部分は盛り上がったサンゴか海底の岩で、白い部分は砂ではなく、一面サンゴのかけらだった。
わたしが砂にこだわるのは、たとえばここに載せた最後の写真はネットで見つけたものだけど、砂地の海底にはサンゴ礁の海とはちがった、静寂にみちた、ひじょうに神秘的な世界がひろがっていることを知っているからである。
サンゴのかけらでは沖縄でめずらしくないし、印象もガサガサとうるさいばかりで、どうもイメージがちがう。
でもねえ。
青い部分、つまりサンゴや岩だけにこだわっても、タンクをせおってじっくり観察すれば、おもしろいものがたくさん見つかるにちがいない。
やっぱり老骨にムチ打つか、年寄りの冷や水で、またダイビングをするっきゃないか。
でも装備一式、すべて捨てちゃったしなあ。
サイズの合わなくなったウエットスーツなんか、ナイフで細かく刻んで。
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