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2014年6月16日 (月)

西表島/シオマネキ

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3点セットのミステリーについてはあとで触れることにして、イダの浜からもどっても、まだ夕食には時間がある。
船浮の桟橋からすこしはなれた海岸に、潮が引くと干潟があらわれる場所があり、そこには甲羅長1~3センチで、片方のはさみだけが異常に大きいシオマネキがたくさんいる。
そのあたりをぶらぶらしてみた。

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シオマネキ (潮招き) は、その大きなはさみを振る動作が、潮を招いているようだというのでこの名前がついた。
わたしは研究者じゃないからわからないけど、ここには大きさの異なるものや色彩のちがうものがいて、数種類が混在しているようだった。
いちばん目立つのは、青と黒の紋様のあるルリマダラシオマネキで、こればかりは目立つがゆえにネットで調べてすぐわかった。

大きなはさみを持つのはオスだけだけど、いろんな写真を検索しているうち、同じ種類でも右利きと左利きがいることに気がついた。
人間並みだなと感心してしまう。
でも大きなはさみはなんの役に立つのだろう。
シオマネキは泥の中のプランクトンなんかを食べていて、餌を食べるときは小さなほうのはさみをつかう。
大きなはさみではそれをつまむことはできないし、だいたい餌を口まで持っていけないのである。
つらつら考察すると、これはご多分にもれず、つまりトナカイは大きな角を、クジャクは華麗なつばさを、カエルは鳴き声の大きさを競うように、知性とはあまり関係ない部分でメスの関心を誘うための武器らしい。
劣性遺伝のわたしはそんな見かけで選ばれるというシステムがキライだけど、人間でもメスってのはたいてい身なりのいい男を選ぶのだからやむをえないか。

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シオマネキをもっとアップで撮ろうと近づくと、みんないっせいに穴の中へ隠れてしまう。
じっと動かずに待っていると、まもなくじわじわと穴から出てくる。
わたしは干潟に置かれたボートに腰かけて、リリパットの住人を高見からながめるガリバーみたく、好奇のまなざしで彼らをながめていた。

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シオマネキについては思い出がある。
30年まえに西表に来たとき、島の東のほうにある由布島に行ってみた。
ここは潮が引くとふたつの島が陸続きになり、いまでもそれが売りモノになっているけど、牛車に乗ったまま島から島へ渡ることができる。
当然ながらふたつの島のあいだに広大な干潟があらわれ、当時はそこで、足の踏み場もないくらい無数のシオマネキがはさみを振っていた。
わたしにとってはそこは西表の生きものの豊穣さを象徴するところだったのだ。

関東地方の片田舎が郷里のわたしは、田んぼのあいだを流れる川や池に、ザリガニやドジョウなどの小動物がおびただしく棲息していた時代をよくおぼえている。
だから由布島のシオマネキがうじゃうじゃガヤガヤという干潟は、理屈じゃなくストレートに、わたしになつかしさを感じさせてくれるところだったのだ。

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