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2014年6月22日 (日)

西表島/船浮の駘蕩

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シュノーケルをやらない日はとくにすることがない。
かまどま荘の屋上に洗濯もの干場がある。
そこへ上がってみたら寝椅子が置いてあったので、iPodと双眼鏡をもってごろり。
潮風が天然クーラーのごとくに吹きわたり、聞こえるのは背後の洗濯物がはためく音ぐらい。
対岸に幾重にも重なった山々と長い海岸線が見えるのに、自分がいる部落以外に民家なんぞひとつも見えない。
静かな理由は、海が目のまえであるのにカモメなどの海鳥がひとつも見えないことかもしれない。
ずっと視野の中を見まわしても、カラスかツバメがときたま飛ぶだけだ。
静寂と幸福感につつまれて認知症のようにぼんやり。
iPodで音楽を聴き、たまに連絡船が到着したら、双眼鏡できれいな娘でも下りてこないかなと、発想はあいかわらず煩悩のオニだけど。

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そのうち沖から大きな双胴船がやってきた。
岸壁に横付けして大勢の観光客がぞろぞろ。
ひなびた船浮にとっちゃひさしぶりの大商いのチャンスだ。
そう思ったけど、観光客はみんな地区の中にある集会所みたいな建物にすい込まれて、かまどま荘にもジュース1本くれという客がいるわけじゃない。
タオルを頭にまいたわたしを地元の漁師とまちがえたのか、ここの人口はどれくらいですかと訊く親父がいたくらい。

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船浮は陸の孤島という特色が話題になって、石垣島から団体でやってくる観光客も多いという。
しかし彼らに食事や休憩をさせる施設がちゃんとあって、地区にお金をおとすことはあまりないそうだ (3番目の写真が団体専用の休憩所)。
そういわれて思い出したけど、団体の中には透明度日本一の海で泳いでみたいというのもいるらしくて、イダの浜の森のなかに干してあったシュノーケリング用の3点セットやライフジャケットは、団体のために石垣のホテルが用意してあるものだという。

このへんはムズカシイ問題だ。
大勢の観光客が船浮の民宿に泊まったら、お金は儲かるかもしれないけど、現状ではとてもまかないきれない。
まかなおうとすれば宿や人員を増やさないわけにいかないし、それは開発へとつながり、観光のいちばんのウリモノである自然の破壊と、最悪の場合人心の荒廃を生むだけだろう。
これじゃ本末転倒だ。

ときどき日本の前途や地球の未来などに想いをいたす、そんなムズカシイ話になっちゃうのがわたしのブログの欠点だな。

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話題を変えて、かまどま荘のとなりにある 「ふねっちゃーぬ家」 というカフェに行ってみよう。
ここは逗子や葉山に置いてもおかしくないカッコいい店だけど、欠点は店が開いていることがめったにないことだ。
たまたま店が開いているときビールを飲みに行ってみた。

店の主人は、むかしは沖縄美人であったと思える元気のいい女性で、どこへ行ってたんですかと訊くと、山へタケノコ採りに行ってましたという。
ビールのつまみにそのタケノコを出してくれた。
ネマガリタケのような細い竹で、島内にはこれの密林があって、島の女性や老人たちにとってこれを採ることが、趣味と実益をかねたけっこうなヒマつぶしになっているようだ。

ヒマつぶしというと語弊があるかもしれないけど、この竹は採集したあと、選り分けたり皮をむいたり味付けをしたりと、食べるまでにけっこう手がかかるので、こういうものがなかったら島の生活は単純すぎるのではないか。
出荷するような産物でもないし、カフェの女主人も自分の家だけで消費するために採っているのだという。
わたしは子供のころ、母親と山へキノコ採りに行ったことを思い出した。
キノコ採りも田舎に住む人たちにとっては、本業とはいえないし、趣味と実益をかねたいいヒマつぶしだったのである。

へえへえと世間話をしながら缶ビールを2本飲んだ。
世間でどんな大きな事件があっても、船浮ではあいかわらず駘蕩と風が吹いていて、港内には色鮮やかな熱帯魚たちが無心に泳いでるんじゃないか。

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