西表島/浦内川クルーズ
サンゴ礁の海とならんで、今回の旅でもっとも手つかずの自然に肉薄したのが、浦内川クルーズだ。
これは上流にあるマリユドゥの滝、カンピレーの滝へ行くために、河口の船着き場と、上流の船着き場までを結ぶ連絡船なんだけど、まるでアマゾンの熱帯雨林を船で行くようなめずらしい体験ができる。
30年まえの記憶を引っ張り出してみると、夏のシーズンには往来するクルーズ船が多いから、帰りは何本も出ている船のどれでも適当なもので帰っていいことになっていた。
ところが今回はキビシく、行くときに帰りの船をちゃんと決めておいて、その船で帰らなければいけないという。
過去になにか乗客が行方不明になるようなトラブルがあったのかもしれない。
帰りの船にアクシデントがあった場合はどうしよう。
そんなことはありえないと思うけど、たとえば歩いて帰ってくることはできますかと、試しに訊いてみた。
笑っちゃいけない。
大震災のときは多くのサラリーマンが徒歩で帰宅した。
あらゆる場合に対処しておくことは、登山家の常識である。
徒歩でもどってこれるなら、森の中を歩いてみたいと思う気持ちもすこしある。
帰ってこれますよ。
ただ、3日か4日はかかるでしょうと、船着き場にいたトレッキング・ガイドらしい快活な青年が答えた。
クルーズ船に乗っている時間はせいぜい20分ぐらいだけど、そのあいだ、陸地はすべて樹木の密集した亜熱帯の森なので、重装備の登山者でないかぎり、この森を踏破するのは困難であるようだ。
浦内川は西表で、いや、沖縄でいちばん大きな川だそうである。
船の操舵手の若者はガイドをかねていて、いろいろ説明をしてくれる。
河口からしばらくは海水と真水の入り混じった汽水域で、両岸はびっしり生い茂るマングローブの森である。
マングローブというのはひとつの木の名前ではなく、汽水域に好んで生える植物の総称で、西表のマングローブはオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種が80パーセントを占めますと、これはガイド君の説明。
川は大蛇のようにまがりくねっていて、平底の観光船はその上をすべるように進んでいく。
ハワイで似たようなクルーズ船に乗ったことがあるけど、こちらはテーマパークではなく、本物のジャングル・クルーズだ。
マングローブの背後はヤシ、ソテツ、アダンなど、南国ふうの植物を含むうっそうとした森である。
とちゅう水辺から森の中へ4つ足の獣が走り去るのを見た。
大きさからしてヤマネコではなく、イノシシのようだった。
ヤマネコは絶滅を危惧される希少種だからめったに見られないけど、イノシシは数が多く、ときどき狩られてカレーの鍋に入ったりしているそうである。
ガイド君が、ここは 「犬の子3匹」 という淵ですと説明する。
むかしここで泳いでいた子イヌが3匹、とつぜん行方不明になりましたとのこと。
つまりこの川には巨大な怪獣がいて、3匹を丸呑みにしたのだということらしい。
そういえば浦内川についていろいろ調べていたら、河口で刺し網に巨大なサメがかかったそうで、ネットにその写真まで載っていた。
怪獣の正体はこれだったかもしれないけど、かわいそうにこのサメは、湯引きをして酢味噌で人間に食べられちゃったそうだ。
沖縄でいちばん大きな川といっても、クルーズ船が行けるのはとちゅうまでで、あとは岩がごろごろした渓流になってしまうから、ふたつの滝へ行くためには船の終点から山道を歩かなければならない。
そのために来たのだから、もちろんわたしは歩くのである。
このときのクルーズのようすを2分ほどのショート・フィルムにして YouTube に上げてあるので、どうしても見たい人は以下のアドレスか、River Urauchi で検索すること。
https://www.youtube.com/watch?v=W7Is6LYLs0s
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