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2014年6月14日 (土)

西表島/船浮とヤドカリ

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やがてかまどま荘の主人が帰ってきた。
若いころは内地へ出稼ぎに行っていたこともあるそうだけど、漁師もやれば釣りやシュノーケリングのガイドもするし、大工も植木屋も庭の草むしりもするという人で、いい色に日焼けしている。
かまどま荘のある船浮地区は10所帯、40人数人の人口で、商店もないから、ここに住む人たちはたいていのことは自分でやるのである。
この地区は古きよき時代の日本を映す鏡でもあるので、コミュニティのきずなは固く、村人の自主的参加で神社 (沖縄では御嶽=うたき) のまわりの雑草刈りなんかしているのも見た。
ちょいとした買い物でも舟がなければハナシにならないから、一家に一艘のエンジンつきボートがある。

小・中学をかねた学校はなかなか立派だ。
生徒は3人しかいないそうだけど、それでも教師、用務員などを含めると、7人ぐらいの人が働いているそうだ。
夜のおそい時間まで灯りのついている教室があったから、地区のカルチャースクールでも開いているのかもしれない。

産業だってある。
港のかたわらに真珠の養殖場があって、ほそぼそと生産をしている。
かまどま荘の奥さんはパンを焼いている。
自宅で消化するには多すぎるから、尋ねてみたら、西表のパン屋に下ろしているのだそうだ。
家内工業であるけど、これだって立派な産業である。
                               
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この船浮地区の土地がリゾート開発企業に買い占められているという。
でも法的制約があって、じっさいに開発はできないらしい。
なんだかよくわからないけど、あまり楽しい話じゃない。
わたしが生きているあいだは、あと20年も30年も先じゃないのだから、このままであってほしいものだ。

メンバーがそろわないから麻雀もできないこの過疎の部落をいろどるのは、やはり豊富な自然だろう。
ひとつ例をあげると、桟橋の近くの路上にはヤドカリがたくさんいる。
ヤドカリは伊豆や房総、三浦半島にもいるけど、わたしが宿のトイレでりきんでいたら、足もとに大きなヤドカリがまよいこんできた。
ガルシア・マルケスの短編に、たくさんのカニが台所に入りこんでくるので、それをつぶして捨てるのが毎日の日課という南米の小さな漁村が出てくるけど、船浮ではヤドカリがゴキブリの領域を冒しているのである。

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最後の2枚の写真がトイレのヤドカリで、殻のサイズはタニシぐらい。
小笠原にはこれよりひとまわり大きいオカヤドカリがおり、海の中にはサザエの殻に棲むオニヤドカリなんて巨大なものもいる。
あのヤシガニもじつはヤドカリの仲間だ。
でもさすがにヤシガニが入れる巻貝の殻なんてめったにないから、彼らは漂着物であるプラスチックの桶をかぶったりする。
これは笑い話ではなく、深刻な公害問題の範ちゅうに入ることである。

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