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2014年10月27日 (月)

J・ブルース

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昨日はジャック・ブルースの訃報が飛び込んできた。
ビートルズ、ストーンズをのぞけば、わたしの青春にもっとも大きな喜びと衝撃を与えてくれたロック・バンドのベーシストだ。
そのバンド名は「クリーム」で、2005年に行った限定的な再結成コンサートでも、そのときすでに彼は足がふらついていたから、お亡くなりになる日が近いのは覚悟していたけど、やはり偶像が落ちたみたいで寂しい。

クリームが活躍したのは1966年から1968年の、ほんの2年半ほどで、これはビートルズが 「ラバーソウル」 から 「サージャント・ペパーズ」 を発表した絶頂期、そしてカブトムシたちの斜陽が始まったころである。

そのころのわたしがよく聴いていたのは、スタジオ録音のビートルズやストーンズがほとんどで、まだライブ演奏というものをほとんど知らなかった。
ビートルズが解散したのが1970年で、その後わたしはポスト・ビートルズを求めて、手当たりしだいにいろんなレコードを聴いていた。
たまたま聴いたのがストーンズの 「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」 で、これでライブ演奏の魅力と迫力に目覚めた。
クリームのレコードをはじめて買ったのもそのころだ。

なにしろ音楽グルメのわたしのことだから、買ったのはいきなり2枚組LPの 「ホィールズ・オブ・ファイア Wheels of Fire」。
音楽雑誌で評判がよかったというだけで、中味も知らないで買ったものだから (クリームの演奏はラジオで放送されることが少なかった)、ハズレだったらえらい損害だなと心配しながら、レコードに針を落としたものである。
そう、このころはまだ針で聴くレコードというものがあった時代なんだよ、お若いの。

このレコードの1枚目はスタジオ録音の曲ばかりだけど、2枚目は全曲ライブ演奏になっていた。
しかも表と裏で4曲しか入ってない。
これがハズレだったらたまんないなと、また心配。
2枚目の最初の曲は 『クロスロード』 という曲で、出だしからベースの重低音がすさまじいハードロック・ナンバーである。
でもこれを聴いただけで、正直もとは取れそうだと安心した。

続いて2曲目は、これが問題だけど、17分ちかくある長い演奏である。
曲のタイトルは 『スプーンフル』。
オリジナルはアメリカの黒人ブルースで、ずっとあとになってわたしは作曲者のハウリン・ウルフも聴いたことがあるけど、そっちのほうはなんてことのないシンプルな曲である。
じつはわたしはジャズの手法、つまりテーマがあって、ほとんどの部分はそれを展開した即興演奏で占められるという音楽を、クリームによってはじめて聴かされたのだ。
ビートルズやストーンズの3分程度の歌に聴きほれていた田舎者の衝撃を想像してほしい。
彼らの演奏をラジオで聴くことがなかったのは、長すぎるということ以外に、歌よりも演奏に重きをおくというそのスタイルにあったのである。

『スプーンフル』 はわりあいのんびりしたペースで始まり、開始4分をすぎたあたりからテンポが変わって即興演奏が始まるんだけど、中間部のギター、ベース、ドラムスのかけあいは壮絶のひとこと。
これを真剣に (なにしろ高い金をつぎこんだのだ) 聴いていると、そのうち体の中のバイオリズムが音楽と完全に一致して、まるで大麻でもやったような陶酔状態におちいってしまう。
最後にふたたびテーマ演奏にもどるころには、張りつめていた気分が抜けて、オナニーでもしたあとみたいにがっくり。

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クリームはギター、ベース、ドラムスの3人編成で、もちろん最大の功労者はギターのエリック・クラプトンだけど、J・ブルースは彼らのオリジナル曲の作曲をほとんど手掛けており、クラプトンの栄光の影で敵役みたいな印象があるものの、公平に判断すればその功績はクラプトンにけっして劣らない。
わたしにとってそのベースは、ベースだけを取り出しても聴くに値する耳新しいものだった。
彼らの演奏を聴いてから、わたしはライブ演奏の魅力にとりつかれ、その後ジャズやクラシックなど、さまざまな音楽の求道的探求者になるのであった。
ということは以前にも書いた。

ありがとうと感謝の言葉とともに、極東の島国からつつしんでJ・ブルースの冥福を祈ってしまう。

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