西表Ⅱ/南風見田浜
西表島で道路があるのは東半分だけ、車なら道路のはしからはしまで走っても1時間くらいだ。
いっぽうのはしは○○旅館に泊まった白浜で、もういっぽうのはしは南風見田 (はえみた) 浜ということになる。
南風見田浜にはキャンプ場や海水浴場があるけど、道路はそこで終わりだから、これより先に行くためには、徒歩で山越えをするか、海岸の磯をつたって歩くしかない。
このとっつきにある海岸は遠浅だし、引き潮になるとあらわれるリーフが天然の障壁になるから、海水浴場としてめぐまれた環境で、夏はけっこうにぎわうようである。
しかしわたしが行ったときはみごとなくらい誰もおらず、咲きおくれたグンバイヒルガオが風に吹かれているだけだった。
後述する休憩所の東屋をのぞけば、もちろん視野の中に1軒の民家も売店もない。
海岸には、かって地球が煮えくり返った時代の痕跡を残す、奇妙なかたちの岩が積み重なっている。
自然愛好家 (そして詩人) にとって、白くて長い砂浜をひとり占めする気分はわるくない。
明るい褐色の砂の上を半透明のユウレイガニがさっと逃げていく。
砂浜にはスナガニの穴がたくさんあいている。
中をのぞきこむと、家主の足が見えるものもあったから、サンゴのかけらを放り込んでみたら、なんだなんだ、だれだだれだと、怒り狂ったカニが飛び出してきた。
ユウレイガニより図体が大きく、そのけんまくがコワイ。
引き潮の波打ちぎわをぶらぶらして、そのへんの石をひっくり返してみると、じっと息をこらしていたカニやエビの仲間が少々。
磯にできたタイドプールを観察してもそれほど動物は多くない。
浅瀬にボラのような小魚の群れがいて、近づくとさざ波をたてて逃げていく。
ちょっともの足りない。
どうもわたしはこの旅で、西表島に過大な期待をしすぎていたようだ。
南風見田浜より先はどうだろう。
磯をつたってまでして先へ行ってみようという観光客はあまりいないだろうから、この先の海岸にはまだまだ驚異の大自然が残っているかもしれない。
地図をみても、西表の南西海岸はほとんど人間の手が入ってない。
来年はカヌーでもおぼえて、もうちっと前人未踏の海岸に押し渡ってみるか。
言い忘れたけど、この浜にはちゃんと使えるシャワーがある。
海岸を見渡せる場所にコンクリートの東屋があり、そのわきにたった1コだけあるんだけど、雑草におおわれていて、サビついた蛇口がひとつあるだけ。
白浜の旅館に泊まっているとき、沖縄人の性格について書かれた本があったから読んでみたら、なんでもすぐに始めるくせにあとの管理が続かない、東南アジアの島々の住人に共通するおおらかさと書いてあった。
このシャワーもそういうものかも。
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