西表Ⅱ/租納と干立
はじからはじまで車で1時間の西表島でも、レンタカーがあると便利である。
レンタカーがあれば、旅行の大きな荷物を積み込んだまま移動が出来てしまう。
それならレンタカーで寝泊まりすれば、究極の貧乏旅行ができるんじゃないかと、わたしも考えたことがあるけど、そうはいかない。
民宿なら1泊2500円からあるけど、レンタカーのほうはもっと高いのだ。
わたしが借りたのは軽四輪で、それでも1日4000円に、保険が1000円つくのだ (ハイシーズンはもっと高そう)。
今回はレンタカーで島中を走りまわった。
これまでの訪問はたいていなにかべつの目的があったから、じっくりのんびり島内をながめるのは今回が初めてである。
租納、干立 (ほしだて) などの集落には、古い沖縄の風景がよく残っているというので、車があるのを幸い、路地から路地へと分け入って、そういうものをたっぷりと見てきた。
租納はフクギ並木があちこちにあって、集落のすぐまえに長いビーチが広がっている。
夏はいい海水浴場になりそうだけど、冬のこの海岸は沖からまともに風を受けるので、砂浜にいたのはひとり旅のさびしい女の子がひとり。
声をかけようかと思ったけど、わたしは火野正平じゃないんだから、身のほどをわきまえた。
干立のほうは租納の海岸よりせまいけど、岬や目のまえの小島が風をさえぎってくれるので、冬でもおだやかなビーチである。
ビーチのはずれに近代的な、小さい漁港があるけど、部落そのものは素朴でなかなかいい感じだ。
砂浜で海を見ていたらうしろからコロコロとゴムまりが転がってきた。
すぐうしろの民家の坊やが遊んでいたものだけど、いちどは拾ってやったものの、2度目は風に吹かれて海の上へ。
それは風に吹かれてどんどん沖合にただよってゆく。
北原白秋か若山牧水が歌にしそうな光景だ。
干立には 「新盛家住宅」 というカヤ葺きの民家が大切に保存されている。
沖縄の民家様式というと、たいていの人が赤瓦としっくいの平屋を思い浮かべるんじゃないだろうか。
石垣島で知り合ったわたしと同年配の男性は、子供のころはカヤ葺きの家ばかりだったよという。
カヤじゃ台風のとき飛んでしまいませんかと訊くと、そういうときは部落の全員で直したんだそうだ。
濃密な隣人関係っていうのはこのへんのことをいうのだろう。
おまけみたいで恐縮だけど、干立の海岸には、文化財に指定されている小さな神社(御嶽=うたき)もある。
租納、干立には泊まってもいいなと思ったけど、ネットをみるとけっこう立派な宿があるみたいなのに、わたしがぶらついた範囲ではどこにそんなものがって感じだった。
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