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2014年12月 4日 (木)

西表Ⅱ/イダの浜

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この旅では涼しい日が多くて、とても泳ぐ気にならなかったけど、1日だけ真夏に逆もどりしたような日があった。
そのときは白浜に泊まっていたから、ここはひとつ、海ひとつへだてた船浮まで渡って、前回の旅で泳ぎそこなったイダの浜で水中撮影をしてこようと考えた。

イダの浜について、前回、前々回の八重山紀行にも書いたけど、原始のままの自然を残した美しい浜である。
なにしろ人工の建造物が、沖に見える小さな無人灯台をのぞけば、ひとつもない。
背後の森の中に、いくらか人間の営みを感じさせるものがあり、これは増殖の気配があるから要注意だな。

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わたしは30年まえにはじめて西表島に来たとき、ダイビングボートに乗って、網取湾というところで昼食をとったことがある。
そのとき海岸でシュノーケリングをしたんだけど、その海の美しさに身もだえするほど感動した。
ここでは足のつく深さのところに、盆栽のようなサンゴやソフトコーラル、イソギンチャクが点在し、そのまわりにクマノミやスズメダイなどのカラフルな小魚が群れていた。
いまでもあれは夢かまぼろしかと思うくらい、それは美しい忘れられない光景だったのである。
わたしが30年後にふたたび西表を訪問したのは、ただただあのときの海をもういちど見たいと念願したからなのだ。

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さて、イダの浜である。
自分の足で波打ちぎわまで行ける海としては、ここは全日本でも特筆するほど (オーバーじゃない) 美しい海である。
石垣島の巨大ホテルから、わざわざ 「美しい海で泳ぐツアー」 なんてのが出ているくらいだ。
たぶんここへ行けば、30年まえの海をもういちど見られるだろうと、わたしは期待してやって来たのだけど、さて首尾はいかに。

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この日にイダの浜で泳いでいたのは、若者のカップルやグループが4組ほど。
ちゃんと薄手のウエットスーツを着ているけど、あまり泳ぎは得意でないらしく、波打ちぎわでポチャポチャやっているだけだった。
そこへ高血圧ぎみのわたしが、たったひとりで沖合100メートルまでシュノーケリングだ。
なんかヒーローになっ気分。
水中カメラを持っていたから、ジャック・イヴ・クストーになった気分とでもいうか。

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イダの浜は遠浅で、最初はアマモの砂地である。
アマモの最盛期はいつなのか、11月ではその量はあまり多くなかった。
そんな砂地の上を、まわりの色にとけ込んだフエフキダイが、幽霊のようにおよいでゆく。
あちらこちらにサンゴの岩山が顔を出しているのは30年まえといっしょだけど、なんか感動する色彩に乏しく、小魚の数も期待したほどではない。
海というのは時間や季節によっても透明度がちがうから、いちがいにいえないけど、やはりわたしの期待した海はそこになかった。

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きれいな小魚はまだサンゴに群がっているし、よそに比べれば美しい海であるのは事実なんだけど、どうもむかし見たものではない。
30年まえの美しい海は、わたしの旺盛すぎる想像力が勝手に生み出した妄想だったのか。
もうわたしも若くないから、あれはわたしの思い出の中に残るだけで、永遠に過去のものになったのだろうか。

ここに載せたのは今回撮った写真。
友人のノボル君が撮った写真は、じっさいに海に潜って撮ったものだからとってもきれいだけど、シュノーケリングではこの程度が限界という証拠写真だ。

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