西表Ⅱ/自然の中で
西表島を代表する野鳥のアカショウビンには、今回いちども出会えなかった。
聞いたところでは、冬になるとどこかへ移動してしまう渡り鳥なんだそうだ。
あの赤い鳥が大海原の上を飛んでいくさまは、想像するとちょっとおもしろいけど、不在というのは野鳥愛好家としてはちと残念。
ほかにも西表には白いサギ、黒いサギ、アオサギなんてのがいたけど、6月にはたくさん見かけた紅いサギ (アマサギ) が1羽もいなかった。
白浜の旅館ではすばらしい貝の標本コレクションを見た。
宿の主人が集めたもので、もともとちゃんと生きていたというから、中身は食べられちゃったのだろう。
小さな白いタカラガイに目と耳を描いて、ウサギに似せたものがあったのには笑ってしまった。
海の中にはじっさいにウミウサギという貝がいるのである。
ほかにもめずらしいもの、貴重なものがたくさんありそうだけど、生きた貝は海に潜らなくちゃ見られない。
ほかに見たもので、めずらしいものというと、小さなホタルくらい。
ひじょうに小さな光なので、どんなホタルなのか確認しようとしたけど、数は少ないし、懐中電灯のライトが切れてしまって、本体を確認することができなかった。
これがいちばん華やかなのは春から夏にかけてらしく、最盛期には光の帯のようになって、それはそれはみごとらしい。
また来年来ようっと。
前回の旅、今回の旅を総括してみると、どうも期待はずれである。
もちろんこのブログにもたくさんのカニの写真を載せたように、いるところにはそれなりの生きものがいるんだけど、わたしが期待していたほど多くないのである。
わざわざ深夜の干潮時間帯に、月明かりの干潟をうろうろしてみたこともあるけど、見たのは動かないナマコぐらいだった。
これはいったいどうしたことだろう。
30年まえに見た景色は、その後わたしの頭の中で勝手に増幅して、じっさいよりもずっと多様な生きものの世界をねつ造していたんだろうか。
いやいや、そうじゃあるまい。
ようするにわたしの過剰な期待と、いいかげんなその態度に原因があるのだ。
野鳥を見たければバズーカ砲みたいな望遠レンズと迷彩服で密林に張り込み、爬虫類が見たければハブの血清を持って藪をかきわけ、カエルが見たければぬめぬめとした湿地帯をさまよい、昆虫が見たければ防虫ネットをかぶって夜中にライトをかざし、魚が見たけりゃ腰にウエイトをまいてダイビングとういう、このくらいの根性がなければほんとうの自然なんて見られるはずがない。
行楽の延長みたいなスタイルで、そのへんの山道でかんたんに見られると思うのがマチガイなのだ。
あらためてナショナル・ジオグラフィックなどのカメラマンに敬意をあらわすとともに、小さなお子さんを連れて、ぜひ西表島で自然学習をさせたいと考えているお母さんたちに、この島の自然の多様性は (矛盾しているように聞こえるかもしれないけど)、やっぱり日本最大のものであると断言してしまう。
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