蕎麦
昨日は蕎麦を食ってきた。
前々項で旨い蕎麦屋をネットで検索したと書いたけど、すると、なんと、わが家の近所にも旨そうな店があることがわかったのである。
店の名前は、と書きかけて、しばし逡巡。
他人の店をグルメでもないわたしが勝手に評価することの罪の深さに愕然としたのである。
じっさいにはそれほどのこともないけど、なにしろ口コミなんてもののキライなわたしのこと、うっかり本音でものを書いて、店が傾いたり、逆に客が殺到しても迷惑だ。
そうかといって、店名も明かさないのでは、フィクションではないかと疑われそう。
それで興味のある人にだけわかるというナゾナゾみたいな書き方をする。
わたしが住んでいるのは東京の三鷹市で、近くに東八道路という立派な道路が走っている。
この近くにわたしの車の面倒をみてくれてるトヨペットの販売店があって、そこでわたしの担当はSさんという可愛い女の子だ。
そんなことはどうでもいいけど、くだんの蕎麦屋はこの東八道路からほんの少し入ったところにある。
入り口にワーゲンの販売店もありますと、これだけいっときゃわかるだろう。
あらかじめ調べてみたら、この店ではとろろそばが1100円もする。
しかし高いということは期待大である。
むかしのわたしは焼け跡派みたいに食べものに無頓着だったけど、最近では、旨いものには費用を惜しまないグルメ、そ、北大路魯山人や池波正太郎や開高健みたいな食通に変身したいと思っているのだ。
近いといってもその蕎麦屋まで、徒歩で20分ぐらいはかかる。
しかしこのくらいなら、いつもの散歩コースよりも近い。
散歩がてらぶらぶらと出かけてみた。
住宅地や畑のわきのめだたない場所にある小さな店で、入ってみたら想像以上に狭かった。
2人用の小さなテーブルが5つ、カウンター席が5つしかないから、満員になっても15人しか入れない。
内装はコンクリート打ちっ放しを模した(じっさいには表面処理がしてある)素っ気ない仕上げで、茶室のような単純な美しさがある。
かすかにジャズが流れていて、雰囲気はフランス料理でもおかしくない感じ。
わたしが入ったとき客は若いのがひとりだけだった。
わたしは型にとらわれない人間だから、ここはやっぱりとろろそば(あったかいほうだから正式には山かけそば)である。
山かけそばだから、出てきたどんぶりを上からながめると、白いとろろばかりだ。
細切りにした海苔と三つ葉が上品に載っている。
下に埋もれている肝心の麺は、するりという感じではなく、舌ざわりのあるほう。
たとえていえば、色気まんまんの人妻ではなく、表現がわるいかもしれないけど、田舎の美少女の肌ざわりとでもいうか。
この表現にはわたしの好みも入っているかもしれない。
わたしはスプーンですくって汁まで美味しくいただいた。
このあとが問題だけど、最近のわたしはとみに少食化しているのだ。
どんぶりがカラになるころは、腹がいっぱいで、もうこれ以上蕎麦を見るのもイヤになっていた。
おかげであとから出てきたそば湯にはまったく手がつけられなかったくらい。
それで評価が変わるわけじゃないけど、やっぱりもりかざるにしておけばよかったかねえ。
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