キューバ
アメリカとキューバが国交正常化だそうだ。
キューバというと、北朝鮮みたいに、文句をいったらすぐに機関銃でハチの巣にされる、極悪非道な独裁国家と思っている人がいるかもしれない。
そのへんの事情を知らない昨今の若いモンにいっとくけど、キューバがいまの社会主義国になったのは、ノーテンキな日本人には思いもよらない悲惨な過去の事情があったのだ。
かってのキューバは、アメリカ資本と結託した独裁政権のもと、人民はサトウキビ畑で奴隷労働を強いられる、植民地主義そのまんまが残っているような国だった。
なんとかしなけりゃと、当時のキューバ政権に反旗をひるがえしたのが、革命家のカストロ (現在の首相の兄貴) やゲバラである。
搾取と貧困を撲滅するために命をかけた彼らのような革命家がいたからこそ、キューバ国民は貪欲なアメリカ資本のあぎとから解放されることができたのである。
政権を奪取すると、今度は自分がそれまでの政権と同じことを始める悪徳革命家も多いけど、首相になったカストロの政策はおおむね国民に支持されていたようである。
それまでのアメリカがひどすぎたのだろう。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」 なんて映画をみると、キューバの人々は、貧しいながらも家族の固いきずなに結ばれ、隣人とは互いに支えあって生きているようで、その陽気な気質ともあいまって、生活ぶりなんかむしろ日本人にはうらやましいくらいである。
この映画を製作したミュージシャンのライ・クーダー (米国人) も同感だったにちがいない。
社会主義の国だからとうぜん国民皆保険制度もあるわけで、「シッコ」 というドキュメンタリー映画では、安い医療設備や薬を求めて、わざわざキューバまで治療や買い出しに行く米国人が登場していた。
拝金主義に毒された医療機関や保険会社に命をゆだねなければならない米国人と、病院と墓場の心配だけはいらないキューバ人の、いったいどっちが幸せといえるのか。
しかし現代は、幸せな生き方が強欲なグローバリズムに席巻される時代である。
幸せに生きるためにも金はいるらしい。
米国の経済封鎖によって社会主義の維持に困難をきたしたキューバは、ついに米国との国交回復に踏み切った。
相手のオバマ君は、さらなる民主化や解放が必要だなんてほざいているけど、アンタにゃいわれたくないね、ったく。
と、はたから見ていてもそう思ってしまう。
この先はどうなるのだろう。
キューバがグローバリズムに組み込まれることで、この地球上に残されていた、古きよき時代の温かな人間関係と、ゆったりした生き方を感じさせてくれる国が、またひとつ消滅することになるのだけは確実のようだ。
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