ロシアⅢ/心配ごと
すでにサンクトペテルブルクもモスクワも、市内の地理には詳しいわたしのことだから、現地に着いてしまえば問題はないはずだけど、心配な点がふたつばかりあった。
ひとつは飛行機の貨物送りにした荷物のこと。
出発前に成田空港で聞いてみたら、それはサンクトペテルブルクで受け取ればいいという。
フツーはそうだけど、わたしの場合、モスクワ空港ですぐつぎの便に乗り換えるわけではなく、時間に余裕を持たせるため2本ばかりあとの便にした。
すると荷物だけ先に行ってしまわないだろうか。
なにしろロシア人というのはおおざっぱで、ソチ五輪ではとちゅうで消えてしまった聖火にライターで火をつけたくらいだから、荷物は着いたのに持ち主があらわれないとなると、もうそれだけで何がなんだかわからなくなって、わたしがあとからゆるゆると到着したころには、荷物がどこかへ行方不明ってことはないだろうか。
もうひとつはサンクトペテルブルクの空港からホテルまで迎車を頼んでおいたこと。
旅行会社からもらった日程表では、飛行機のモスクワ発の時間は21時発になっていた。
ところがこれが1時間遅れた (この時点ではわたしはまだ標準時間が変更になったことを知らない)。
迎車の運転手は、なにしろおおざっぱなロシア人のことだから、しびれを切らしてさっさと帰ってしまうのではないか。
そうなると空港からホテルまで自分でタクシーをつかまえるしかない。
外国旅行を何度もしているので知ってるけど、こういうお上りさんがタクシーの運転手にとっては最高のカモである。
ちくしょう、街までの相場を調べておくんだったと悔やんだけど、あとの祭り。
でも問題はなかった。
サンクトペテルブルクでわたしの荷物は3番目に出てきた。
迎車の運転手もすぐに見つかった。
わたしが空港の一般フロアに出て、コートのチャックをしめ、顔を上げたとたんに、わたしの名前を書いたボードを上げている男を発見したのである。
彼はあごひげをたくわえたプロレスラーみたいな巨漢だった。
しかしけっこう良心的で、深夜割増でも取られるんじゃないかと、あらかじめ300ルーブル (以後ルーブルはロシア語のPであらわす) を用意していたのに、ホテルに着くとそれも要求せずにさっさと行こうとする。
感動したわたしは300Pをチップとして上げてしまった。
外国でチップを払わない主義のわたしだけど、この晩の安堵感はとてつもなく大きかったのだ。
写真はサンクトペテルブルク空港や、迎車の運転手など。
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