ロシアⅢ/モスクワ駅
サンクトペテルブルクに着いて、最初はエルミタージュかというと、そうではなくて、まず出かけたのはモスクワ駅。
わたしは3日後に、この駅からサプサン号というロシアの新幹線でモスクワに移動することになってるんだけど、当日になってもたもたしないよう、あらかじめ駅の下見をしておくことにしたのである。
どうせこの日は金曜日で、エルミタージュのまわりで何か催しものがあるなら明日かあさってだろうと、そこまで読んでの行動だ。
ホテルから最寄りのメトロ駅はゴシチニ・ドゥォールだ。
そこから確か2つ目の駅だったなってことで、アレクサンドラ・ネフスコヴォという駅でメトロを降りた。
なんか様子がちがう。
わたしは2年前にいちどサプサン号に乗ったことがあるから、駅のまわりの景色はいくらか知っていた。
それとちがう。
駅の正面に教会が見えるけど、そんなものはなかったぞい。
教会まで行ってみた。
どうせ急ぐ理由はないのだ。
教会の手前で結婚式をしていた。
どこの国でも嫁さんていうのはカワイイ。
さらに教会に近づくと、堀にかこまれ、橋の手前には墓地もある。
結婚式と墓地・・・・・・
誕生と死亡、戦争と平和、希望と失望なんていろんな語句をつぶやきながら、けっきょくどちらにも入ってみなかった。
急ぐ理由はないけど、教会や墓地をのぞくと、それだけでくたびれてしまいそうだったので。
モスクワ駅が見つからないので、メトロの駅前にあった花屋で訊いてみた。
年配の女性はわたしのカタコトの英語を聞いただけで逃げてしまった。
もうひとりの若い娘の方は、親切に聞いてくれて、熱心に教えてくれた。
なかなか可愛い娘だったと、こういう相手だといつまでも記憶に残るのがわたしのイケナイ性格かもしれない。
ヘタな英語でモスクワ・ステーションといっても、彼女は首をかしげていたから、サプサン・エクスプレスと言い直した。
サプサンはロシア語で鷹という意味だし、新幹線の名前だということもたいていのロシア人なら知っているはずだから、これでわかってもらえたようだった。
わたしは駅をひとつ行き過ぎていたのだ。
メトロでマヤコフスカヤという駅まで引き返す。
駅から出ると目の前にエジプトふうのオベリスクがそびえており、モスクワ駅もすぐわかった。
4、5番目はオベリスクとモスクワ駅。
駅の構内のようす、サプサン号の乗り場などをしっかり頭にたたきこんで、ホテルにもどることにした。
でも、マヤコフスカヤ駅は、ホテルの最寄り駅であるゴシチニ・ドゥォールのすぐとなりの駅なので、いまさらメトロに乗るくらいなら歩いたほうが早いくらいだ。
ネフスキー通りに立つと、モスクワ駅ののオベリスクから、エルミタージュのとなりにある旧海軍省の金の突塔まで、一直線に見渡せて、なんだかすごく近いように見えてしまうのである。
目的は達したので急ぐ必要もないし、ネフスキー通りをぶらぶらしながら帰ることにした。
じつに幸せな気分だった。
この日のサンクトペテルブルクに日本人の観光客は、団体がひとつかふたつに、個人客もいないことはないみたいだったけど、わたしの知り合いがひとりもいなかったことだけは確実だ。
こういう状況はわたしをとほうもない開放感で包みこむ。
偏屈といわばいえ、旅を愛し、孤独を愛するってのはこういうことであり、同じような傾向の著名人は決して少なくないのである。
サンクトペテルブルクを放浪する山頭火ってところだな。
やっぱり現実逃避っていわれそうだけど。
最後の写真はとちゅうにあるフォンタンカ川の橋の上から、凍った川を見下ろしたところ。
氷上になにやら英語が書いてある。
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