また会いましょう
YouTube にスタンリー・キューブリックの映像 (映画の制作にまつわるもの) が載っていたので、それを追っているうち、「ジャズにまつわる話」 を書いたある人のブログにたどりついた。
このブログを書いている人 (ブロガー) は、プロかセミプロかわからないけど、自分でも歌をうたうらしく、音楽に対するうんちくはなかなかのものがある。
ところがある記述を読んでがっかり。
彼は 「博士の異常な愛情」 のラストで歌われる 「また会いましょう」 について書いていて、そこでこの映画の内容にもふれており、その最後の部分は以下のとおり。
《1964年のイギリス/アメリカ映画「博士の異常な愛情」をご存知の方がいると思います。
米ソ冷戦時代、一人の将軍の狂気から水爆合戦が起きてしまうという最悪の映画ですが、最後に地球上に次々と水爆が爆発するシーンのバックに流れるのが、Vera Lynnの”We'll Meet Again”でした。
どういう意味かは映画を見れば分かりますが、何とも馬鹿げたストーリーで、地上の放射能が半減する100年後に「また会いましょう」と歌っているのです。
詳しく知りたい方はDVDでも見てご覧なさい。
これもこの歌を敢えて歌おうとしないもう1つの拘りでもあります》
やれやれ。
これは酷評といっていいものだろう。
誰がどんな映画をキライになろうと、他人がごちゃごちゃいうべきスジのもんじゃないけど、これはちょっとひどすぎる。
わたしは 「博士の異常な愛情」 を、映画史に残る傑作だと思っているのである。
このブロガー氏はジャズについての解説を英語でも書いてるくらいだから、米語にも強いインテリらしい。
しかし文章のあちこちに偏見のようなものが感じられ、ロックという音楽についてもハナっから相手にしてないところをみると、ジャズやクラシックを至上のもとのと考える、純粋すぎる音楽ファンのようである。
大半のロックは彼のいうようなものかもしれないけど、現在の音楽シーンでロックを抜きにして話が進むだろうか。
文章量はそうとうのものがあるから、たいした労作であるけれど、おかげでわたしはこのブログにすぐに興味を失ってしまった。
インテリにせよ凡テリにせよ、喜劇を軽視する、あるいは寓意というものを理解しない人は往々にしているものである。
しかし 「博士の異常な愛情」 を傑作と認めるのは、映画好きならそれほどむずかしいことではないから、あるいはこの人はこの映画をよく観てないのかもしれない。
キューブリックが映画のラストに使った 「また会いましょう」 は YouTube で聴くことができる。
https://www.youtube.com/watch?v=iSZJbJ4Mfis
この歌がなかったら映画の魅力は半減していただろう。
それ以上に、この映画がなかったら、わたしはこの曲を永遠に知らなかったかもしれない。
それはとってもオソロシイことである。
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